初めての全日本選手権
世の中はツール・ド・フランス一色ではありますが、6月末に開催された全日本選手権こと「全日本自転車競技選手権大会ロード・レース」に行ってきたときのことをチラッと。僕らが観戦したのは、土曜のWE(女子エリート)と日曜日のMM(男子マスター)、そしてME(メンズエリート)の3競技です。
これまでTOJほかいくつのレース観戦に行きましたが、ロードの全日本選手権をナマで見るのはこのときが初めて。「レース前はかなりピリついていますよ」とのことでしたが、日本一を決める大会ということもあって、いつものレース会場とは違った雰囲気が漂っていました。
レース当日はかなりの暑さで、見ているだけの僕らもヘトヘトになるほど。ただ気温が高いだけでなく、日本特有の湿気がねっとりとカラダにまとわりついてくるんです。そんななか選手たちは160km、5,000up(ME)という過酷なコースを走るわけですから、同じサイクリストとしてリスペクトしかありません。
さて、コースは全長8kmの周回。MEのみJ-SPORTSの中継があったんですが、現地にはオーロラヴィジョン的なものは何もないので、現地の実況と目の前の選手を目で追って状況を把握するしか方法はありません。レース全体を把握したいのであれば、中継を見ていた方が間違いなく分かりやすいはず。
僕がイベントの良し悪しを判断する基準のひとつに「妻や子どもを連れていけるかどうか」があるんですが、今回見た全日本選手権に限って言えばかなり難しいなぁと感じました。
予算、競技方針、立地条件など色々あるとは思いますが、現地でもっとできることはある気がするんですよね。ある方が「考え方によっては伸びしろだらけってことですよ(笑)」とおっしゃっていましたが、日本一を決める大会がもっと盛り上がってほしいし、一人でも多くの方がロードレースに触れられる機会になってくれればいいなぁと思います。
とはいいつつも、生で見る全日本選手権は暑かったけど、それ以上に熱かった。誰が勝つのか、どういう展開になるのか、プロトンが目の前を通過するのを見るのは、中継では得られない迫力があります。MEのよりリアルかつ詳細な現地レポートは、来週水曜日に小俣雄風太さんの筆でお届けするのでのでぜひご覧ください。
MEで優勝したのは山本大喜選手(大きく喜ぶと書いてまさきと読みます)でした。レース直後に少しだけ話をさせてもらったんですが、興味深かったのは彼の機材。バイクはファクターのオストロ ヴァムで、前後ともにデュラのC50を履き、チェーンリングはなんと56-44(リアスプロケの歯数を聞くのを忘れました…)と、5,000m近くも上るにも関わらず攻めたセッティング。タイヤは新しく出たヴィットリアのコルサ プロの28Cで空気圧は前後ともに5.2(!)だそうです。
「下ハンをもって上りをダンシングするときにしっかりかかるよう、下りはしっかりトルクをかけられるようにこのセッティングにしています」
僕らホビーサイクリストにはまったく参考にならないセッティングですが、山本選手の「最後まで逃げ切る自信はあったし、絶対に自分が勝つと自信をもって走っていました」という言葉が印象的でした。
最後にLa routeメンバーの高山が900枚以上撮った中から厳選した12枚のお気に入りのカットを彼のコメントとともにお届けします。
(栗山)
MEレース2時間前。談笑する群馬グリフィン監督の渡辺将大さんと、フォトグラファーの田辺信彦さん。この2人だけを切り取ると、ロードレースの現場というより前橋CX感が強いような。
レース前の小林 海選手。僕は「無事かい?」「生きてるかい?」と毎日フォロワーの生存確認をしてくれる彼のTwitterが好き。最近再び髭を伸ばしてくれて、レース中もその姿を見つけやすくなりました。
朝の男子マスターズ40-49で優勝した高岡亮寛さん。La routeでは表彰式の様子を絶対に正面から押さえろ、といった指示や決まりがありません。なので僕は必ずステージサイドや、回り込めれば表彰台の後ろ側にも行きます。これから大勢の人の拍手喝さいを浴びることになる選手の後ろ姿とか、実際にステージでセレブレーションに応える選手の背中が好きなんです。
スタート直前。キナンの畑中勇介選手が、目の前の新城選手にひと声。「いつまで走るんですか」「お前もな」。1歳違いのベテラン2人。短いやり取りでしたが、何かすごくよかった。
スタートを見届け、MTBコースをショートカットした先の下りコーナーにて。ファインダーをのぞきながらできるだけ低い体勢で撮影すべく、僕は決してきれいではない細い側溝に身体を沈めたのでした。見返すと、写真のデキうんぬんというよりも、自転車ってこんなに傾けられるんだと感心してしまいます。
今年のTEAM UKYOは強すぎる。そしてその憎たらしいほどの強さとブラックのジャージが、どこかヒール感を醸し出してすらいます。まあ、そこがかっこいいんですが。バイクまで黒づくめで見分けづらいUKYOの選手たち。でも山本大喜選手はブラケットを極端に内向きにセッティングしているのですぐにわかります。実は僕も、キナン時代の大喜選手を見て愛車のアディクトのブラケットを内側に傾けたクチ。
草むらの陰から、覗き見風カット。
覗き見風カット、その②。レース中盤にコースを移動中、ひょいっと植え込みの隙間から草むらの中へと入っていた別府史之さんを発見(La routeのインタビュー記事はこちらとこちら)。どうやら観戦場所を一気にワープできるショートカットルートのよう。そんなフミさんを追いかけた先にあった崖の中腹から、濃い緑のすき間を選手たちが走り抜けていく様を撮影。このときの僕の気分は、不思議な何かに誘われて森の中の異世界へと迷い込んだ、ジブリ映画の主人公のそれ。
覗き見風カット、その③。CSCにある無料休憩所の建物の窓から、競輪学校方面の森を望む。と、時折、山間を極彩色の集団が移動していきます。もっと大きなレンズを持っていたらちゃんと状況が伝わる写真が撮れるんでしょうが、良くも悪くも僕の機材の限界と開き直りっぷりを表してます。
連続する下りの高速コーナーに合わせて、右から左へとリズミカルに身体とバイクを傾ける選手たち。見ている分には簡単そうに走っているのですが……。
バイクの上では顔をゆがめて持てる力のすべてを振り絞っている、というのが仁さんのイメージ。アワーレコード挑戦時もそうでした。中里 仁選手こそ、「苦痛の先の栄光」を体現している男なのではないでしょうか。その分、走り終えたあとの清々しくて愛嬌のある笑顔とのギャップがたまりません。
フィニッシュする新城選手を大勢のファンが迎える。この距離で世界の走りを目の当たりにできるのは、全日本選手権ならではでしょう。とはいえそれも、現時点では新城選手が現役でいてくれればの話。スピード、強さ、実績、存在感……あらゆる面で新城選手を脅かす存在が国内から出てくれば、もっともっと全日本選手権は盛り上がるはずです。
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