渡辺将大まさひろさんに初めて会ったのは、萩原麻由子さんにインタビューしたときだった。引退を発表したばかりの時期ということもあり、こちらはやや緊張して萩原さんと対面したのだが「ハギワラ、ベニ1口紅のこと。ぐらい塗って来いよー」と、彼特有の大きな声とガハハという笑顔でその場の緊張をほぐしてくれたのだった。

「萩原さんがインタビューを受けてくれたのは、ナベくんの後押しもあったみたいです」

一緒に萩原さん取材を行った小俣雄風太さんからそんな話を後から聞いた。そして「彼はこれから群馬のサイクルシーンを牽引する存在ですよ」とも。

その後、La routeメンバーで観戦しにいった野辺山シクロクロスではたまたま渡辺さんがC2クラスで優勝したのを見かけ、東京で行われた合同展示会2サイクルショップ タキザワは輸入代理店業務も行っている。でも再会した。

いつ、どこであっても、彼は「おつかれっすー!」と快活で、話しているこちらがパワーをもらえるような気持ちのよい人物だ。「いつかちゃんと話してみたいなぁ」とぼんやりとは思っていたのだが、それを決定づけたのは今年6月末に開催された、全日本選手権でのこと。彼が監督を務める「群馬グリフィン」に所属する金子宗平選手が大方の予想を裏切って、個人TT男子エリートで優勝したのだ。

さらに追い打ちをかけたのが、元プロロードレーサー西薗良太さんが主宰する「Side by Side Radio」の全日本選手権のレポートの回で「ピリピリした全日本選手権の空間のなかで、群馬グリフィンだけバイクロアなんだよね」という発言。

ますます渡辺将大という人物に興味が湧いた。話を聞くなら今がそのとき。編集者としての勘を頼りに、僕らは群馬県前橋市に向かったのだった。

(栗山)

1985年、東京都生まれ。両親の仕事の関係で生後すぐに群馬県沼田市へ移り住む。幼少期から水泳をはじめたのを皮切りに、小中学校ではアルペンスキーやトライアスロンといったスポーツで好成績を挙げる。高校から本格的に自転車競技をはじめ、大学まで学連選手として活躍。中央大学自転車競技部を引退後、サイクルショップタキザワに勤務するように。2019年から地元のJプロツアーチーム「群馬グリフィン」のコーチに就任し、翌2020年から監督に就任。「練習では僕も一緒に走ってるんですよ。そのときは全員倒すつもりで走ってます(笑)」。なお群馬グリフィンの最新の動きは、このほど開設された公式インスタグラムをチェック。

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