のっけから私事で恐縮なのだが、今から25年以上も昔、高岡亮寛と私は同じチームに籍を置いていた。かつてシマノや宇都宮ブリッツェンなどで活躍しアテネ五輪出場も果たしたプロ選手、鈴木真理のお父さんが息子のオリンピック出場を目指して、その当時に立ち上げた「チームアトランタ」というクラブチームだ。

チームメートだったとはいえ、その頃の私といえば自転車専門誌『サイクルスポーツ』の駆け出し編集部員、第一線で走る側としてのロードレースは卒業していため、高岡(古くからの知り合いなのであえていつも通りのこの呼び名でいかせていただきたい)と練習やレースを共にしたことはなかった。しかしながら取材などの折に触れて学生時代の彼のレースを見ることもあった。

当時の活躍からすると、鈴木真理の後を追ってロード選手を目指すと思ったものだが、高岡が歩んだサイクリストの道は違ったものだった。「なぜ選手の道を進まなかったのか」という問はずっと私の胸の内に残ったままで、さらにサイクルショップのオーナーとなった最近は「なぜ一流企業の社員から自転車店の開業に至ったのか」という問が浮かぶ……。そこで改めて“自転車人高岡”の“これまで”と“これから”を知りたくなり、開店して間もない彼の城「RX BIKE」に足を運ぶことにした。

高岡亮寛
高岡亮寛(たかおかあきひろ)、1977年、神奈川県出身。学生時代はU23世界選手権代表、インカレチャンピオンを獲得。就職後はホビーレーサーとして活動し、ツール・ド・おきなわを6度制覇、2018年グランフォンド世界選では2位(40/44の部)になるなど、カリスマホビーレーサーとしてサイクリストの注目を浴びている。今年4月には自らのショップ「RX BIKE」を東京・目黒区にオープンした。

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