イコールブレーキ化と同時に68アルテで11速化したレモン君。普段はマヴィックのクロスマックスにグラベルキングを付けてオフロードを走ってるんですが、どこへでも気軽に乗って行けるシティコミューターとして使うときは、このときのむラボで組みなおしてもらった手組ホイールを履かせてます。

駆動系が11速になったので、この手組ホイールのスプロケも11速用に交換しようとして、気付きました。このハブ(FH-M755)のフリーボディ、10速用じゃん……。シマノの10速時代のフリーボディに11速のロード用スプロケは入らないんですよね。

さて困った。これじゃこのホイールが使えない。一瞬手放そうかとも思ったんですが、いまどき135mmエンドのクイックレリーズ仕様の手組ディスクブレーキ用ホイールなんて誰も欲しがらないだろうし、せっかく野村さんに組みなおしてもらったものだし、このホイールに25C履かせると思いのほか調子よく走ってくれるし、オープンプロCDという今となってはレアなリムだし……と勿体ないお化けが出てきて、思い留まりました。

思い留まったと同時に、思い出しました。10速用フリーボディに入るロード用11速スプロケがシマノから出てなかったっけ?

検索してみると、あったあった。CS-HG800-11(アルテグラグレード)とCS-HG700-11(105グレード)です。いずれも11-34Tのみですが、これを使ってこのホイールを活用することにしよう。

しかしスプロケを交換しただけでは事は済みません。なぜなら現在レモン君のリヤディレーラーはRD-6800のSSなので、最大ギヤが28T。じゃあこれを機にリヤディレーラーも交換して、クロスマックスに付けるスプロケも11-34Tにワイドレシオ化してしまおう。
ということで、CS-HG700-11を2つと、それに合わせて最大スプロケ34Tのリヤディレーラー、RD-R7000-GSを買いました。6800系アルテのSTIとR7000系105のディレーラーは互換性があるんです。

今よりガンガン走ってた頃、ギヤ比のワイド化は「自分にはカンケーないこと」でした。もちろんロード用のコンパクトクランクというものが出現し、ロード用コンポが多段化に伴ってどんどんワイドレシオ化していることは弁えてましたが、どちらも自分の速度域には必要ないものでした。どんな激坂でも27Tがあれば上れていたし、ギヤが足りなくなったらダンシングで頑張りゃいいんだ、と。それがロードで走るってことだろ、と。

だから、先輩ライター達がロードバイクのワイドレシオ化に注目していたのとは対照的に、どこか冷ややかな目でそれを見てました。ロードなのに速く走ることを諦めちゃいましたと言っているようで。
しかし、ロードバイクが「速く走るためだけのもの」ではなくなり、いつしかコンパクトクランクとロー30T以上が当たり前になり、僕も常用速度域が低くなってそれらの恩恵に与るように。

でもギヤ比の本当の大切さを身をもって実感したのは、やはりレモンでオフロードを走るようになってからです。レモンは元々シクロクロスバイクなので、46-36Tの11-25Tというクロスレシオで組まれてました。それじゃさすがに、ということでインナーを34Tに、11速化してスプロケを11-28Tにしたんですが、フラットダートならこれで十分でも、里山を走ったりするともう全然足りない。
舗装路ではありえないトレイルの激坂で苦しみながら、悶絶しつつ木の根っこや岩を乗り越えながら、ワイドなギヤがあったらもっと楽しくなるのに、と思ってたところだったんです。

というわけで一気にレモンのワイドレシオ化を進め、グラベルロードらしいギヤ比になりました。しかしパーツの選定をしているときに痛感したのが、世代間・グレード間の互換性と、カテゴリ間の境界線の鬱陶しさ。

今まではロード用とMTB用のパーツに互換性がないのが当たり前でした。だって別種の乗り物だったから。ロードとMTBではレバー比が違ったし、互換性を持たせられなかった。でも今は違います。森本禎介さんもここで書かれてますが、今はロードとMTBの境界線がどんどん曖昧になっている。しかも変速の指示をケーブルではなく電気信号で行うようになったため、やろうと思えばどんなスプロケでも変速させられる。

コンポにおけるロードとMTBのクロスオーバー、それをいち早く実現したのがスラムです。無線電動変速のメリットをフルに活かして、MTBとグラベルロードとロードの垣根を取っ払いつつある。遊び方のボーダーレス化が進んでいるなら、その遊びに使うパーツもボーダーレス化するのが自然な流れ。もちろんチェーン駆動の外装変速機である限り、ディレーラーのキャパシティとチェーンの長さには注意が必要ですが、スラムが先鞭をつけた「ギヤ比の壁崩壊→オンロード/オフロードの統合」というこの流れには、シマノもカンパも追従するんだろうな―― そんなことを考えながら、古の機械式変速のギヤ比を一新したのでした。

さーて明日はこいつで走るぞ……と思ったらしっかり雨。お気に入りのコースには水はけの悪い場所が数か所あり、雨が降ると数日はホイールの1/3が埋まりそうな泥濘ゾーンができるんだよなぁ……。早く梅雨明けないかなぁ。

(安井)