自転車業界で暴利は貪れない

「自転車業界は新規格を次々と投入して我々から搾取しようとしている」という類の陰謀論はずっと前からある。世紀をまたいでこの業界で働く筆者も耳にタコができるほど聞いたし、口酸っぱくして否定しても止むことはない。もうすぐ本稿はペイウォールの向こう側になるだろうが、改めて言っておく。そんなEvilな人間はこの業界にはいない。

これは歴然たる事実だが、自転車業界で巨額の富を築いた人は本当に少ない。製造業者ならジャイアントを創業したキング・リュー氏がその頂点に燦然と輝くだろう。販売業者ならゲーリーフィッシャーブランドを台湾の会社からトレックに売却する仲介をした、伝説的なアメリカのビジネスマンがいた。その昔、上司に「彼は競走馬を持っていた」と聞いたことがある。Howie Cohenと名前で検索してほしい。彼はアメリカのマーケットと日本の自転車製造業を繋ぐ架け橋となりビジネスを成長させた。しかし、その程度だ。ローレンス・ストロールのように息子をF1で走らせることはできない。

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column

日本のオフロードを考える(Vol.1) ┃この国で土遊びは根付くのか

グラベルロードが盛り上がりを見せており、マウンテンバイクにも追い風が吹いている。一方、課題なのが“走る場所”問題だ。日本の未舗装路は法的に曖昧かつ複雑なことが多く、過去のマウンテンバイクブームでもクリアにならないまま。このままいけば、グレーゾーンだった場所ですら走れなくなる可能性もゼロではない。そこでLa routeは、自転車界のオフロード回帰が進んでいる今、この問題にあえてメスを入れたい。連載企画「日本のオフロードを考える」第1回は、暗部を含め日本のオフロードシーンを長年見てきた山本修二が自身の経験に基づき、「日本ではなぜオフロードの自転車遊びが根付かないのか」について考えた。

2021.10.25

column

Le Tour ensemble(Vol.01)|14年ぶりの再会

ツール・ド・フランスの熱い夏がはじまった。選手、機材メーカー、スポンサー、オーガーナイザー、メディア、観客——。今年もそうしたすべてを飲み込み、プロトンは進んでいく。「Le Tour ensemble」では、14年ぶりに現地に赴いたジャーナリストの小俣雄風太による、ツール・ド・フランスのリアルな現地レポートを複数回にわけてお届けする。記念すべき第1回は、ツール取材を思い立ったきっかけ、そして7月4日から石畳ステージとなった7月6日までの模様を現地からレポートする。

2022.07.07

column

辻 啓のSakaiからSekaiへ(Vol.05)|アデレードで見たプロトン

大阪府堺市出身のサイクルフォトグラファー、辻 啓の連載企画「Sakai からSekaiへ」が1年半ぶりにカムバック。第5回のテーマは、オーストラリアで行われた南半球最大のステージレース「ツアー・ダウンアンダー」。レースや撮影の裏側を、現地の空気感とともにお届け。サイクルフォトグラファーを目指す方から、ロードレースファンに至るまで、必見の内容です!

2023.02.06

column

メカニック小畑 の言いたい放題(Vol.1) ロードバイクにディスクブレーキは必要か?

なるしまフレンドの名メカニックにして、国内最高峰のJプロツアーに参戦する小畑 郁さん。なるしまフレンドの店頭で、レース集団の中で、日本のスポーツバイクシーンを見続けてきた小畑さんは、今どんなことを考えているのか。小畑×安井の対談でお届けする連載企画「メカニック小畑の言いたい放題」。第1回のテーマはディスクロード。リムブレーキとの性能差、構造上の問題点などを、メカニック目線&選手目線で包み隠さずお伝えする。

2020.11.23

touring

La route栗山の環島ツアー参加レポート|夢の付き人

サイクリストなら、環島(ホァンダオ)という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。環島とは徒歩含む何らかの移動手段で台湾を一周することだが、サイクリストにとってのそれは、自転車での台湾一周を意味する。3月上旬。プロデューサーの栗山晃靖が、ふとしたきっかけで環島自転車ツアーに参加することになった。1日100kmを9日間連続で走るライドは彼にとって未知の領域。そもそもなぜ台湾を自転車で一周することになったのだろうか。果たして無事完走することはできるのだろうか。環島自転車ツアーに参加した栗山の9日に渡るレポートをお届けする。

2023.05.15

interview

日本のオフロードを考える(Vol.2) ┃今そこにある危機(と希望)

前回からスタートした「日本のオフロードを考える」。第2回では、長野県で12年にわたってマウンテンバイクのガイドツアーを主宰しているトレイルカッターのお2人に話を伺う。トレイル整備の大変さ、日本でMTBを楽しむ難しさ、地域の人々の反対、過去のマウンテンバイカーの素行の悪さ……。グラベルロードがブームになって機材の選択肢が増え、ハードの面では追い風が吹いている。しかしソフト面では向かい風に曝されているように思える日本のオフロードシーン。しかし、そこにも希望はあった。前回に続き、聞き手&書き手は日本オフロード界の先駆け、山本修二だ。

2021.11.29

interview

日本のオフロードを考える(Vol.3) ┃国立公園初のトレイルが生まれた日

課題だらけの日本のオフロードシーンにメスを入れるべく始まった連載「日本のオフロードを考える」。第3回は、日本の国立公園初となるパブリックトレイル、「のりくらコミュニティマウンテンバイクトレイル」(NCMT)を取り上げる。「ヒルクライマーの聖地」として崇められる乗鞍に、突如誕生した本格的なトレイルだ。NCMTの誕生には、どんな裏ドラがあったのか。そして、NCMTは今後の日本のオフロードシーンにどんな影響を与えるのか―。NCMT誕生に尽力した2人のキーマンに話を聞いた。聞き手と書き手は、乗鞍という地に憑りつかれたジャーナリスト、ハシケンこと橋本謙司が務める。

2022.03.30

interview

日本のオフロードを考える(Vol.4)|NCMTの魅力と課題と可能性

日本のオフロードシーンにメスを入れるべく始まった連載企画「日本のオフロードを考える」。Vol.3では日本の国立公園初となるパブリックトレイル、「のりくらコミュニティマウンテンバイクトレイルズ」(NCMT)の誕生秘話をお伝えしたが、Vol.4では安井行生によるNCMTの実走レポートと、NCMTの誕生に尽力したキーマン、山口 謙氏のインタビューをお届けする。NCMTの本格運用から早数か月。乗鞍高原の自然を活かしたコースを走って、キーマンに話を聞いたからこそ見えてきた、NCMTと日本のMTBシーンの課題とは。

2022.11.21

touring

奥鬼怒グラベルツアー参加レポート|山の奥の、そのまたむこう

「東京の奥座敷」と呼ばれる栃木県日光市の鬼怒川温泉。そこからさらに山深く入った場所にある奥鬼怒温泉は、鬼怒川の源流域にあたる。そこへ行くルートは未舗装路の奥鬼怒スーパー林道しかなく、しかも普段は自転車を含めた車両の通行が禁止されている。そんな「関東最後の秘湯」へグラベルロードで行くモニターツアーが開催され、安井行生が参加。山奥のグラベルは未経験だという安井は、“本当のグラベル遊び”を経験し、何を想ったか。

2022.12.07

column

Imagine a cycling world without Rapha| 苦痛の先に今も栄光はあるか

2004年、イギリスで誕生した「ラファ」。多くの人にとってラファはサイクルウェアブランドの1つというイメージが強いかもしれないが、それはラファがもつ表層の一部でしかない。ではラファとは、いったい何なのか。ラファが日本国内の自転車文化にもたらしたものは、いったい何だったのか。2021年に創業者であるサイモン・モットラム氏がCEOから退任し、そして矢野大介氏がラファジャパンの代表から退いたこのタイミングで、改めてラファというブランドの足跡と本質を探ってみたい。

2022.11.14

column

路上の囚人たち(Vol.01)

社会派ジャーナリスト、アルベール・ロンドル(1884―1932)。生前、精神病患者の悲惨な境遇、黒人奴隷売買の実態、南米のフランス人女性売春などをルポルタージュし、社会に大きな反響を巻き起こすとともに社会改革のきっかけをつくり、後世のジャーナリストに影響を与え続けた人物である。そんな彼が、1924年にあるテーマについて取材を行った。読者の皆さんもご存知の「ツール・ド・フランス」である。自転車競技についてまったくの素人である彼に、フランス全土を熱狂させていたこのスポーツイベントは一体どう映ったのだろうか――。アルベール・ロンドルが1924年6月22日~7月20日までの全行程5425kmの大会期間中に『ル・プチ・パリジャン』紙に寄稿したルポルタージュを、スポーツライターであり自身もフランス在住経験もある小俣雄風太の翻訳でお届けする。

2020.08.17

touring

ワーホリサイクリスト中内のロンドン自転車日記(Vol.02)|パンクの神と拾う神

中内 陸、25歳。2022年3月からワーキングホリデー制度を活用し、愛車とともにイギリス・ロンドンで生活している。「ワーホリサイクリスト中内のロンドン自転車日記」では、そんな中内 陸が見て、感じた、イギリスの自転車事情を綴っていく。第2回目は、仕事のついで(?)に行ったウェールズからロンドンまでの270kmロングライドレポート。暗闇と寒さの中、果たして彼は無事にロンドンに辿り着いたのだろうか…?

2023.01.23

touring

乗鞍を再発見する私的自転車小旅行|冷泉小屋での白昼夢

岐阜県と長野県の県境にある乗鞍。登山、スキー、温泉などの山岳観光地として知られるが、自転車乗りにとっては「ヒルクライムの聖地」である。1986年からはヒルクライム大会が開催され、多くのクライマーが頂上に向けてペダルを踏む。そんな乗鞍の中腹にぽつんと建っている古ぼけた山小屋、冷泉小屋。16年間閉鎖されていたが、今年リニューアルし営業を再開した。かつてはタイムを縮めるために毎年通っていた安井行生が、数年ぶりに乗鞍を訪れ、冷泉小屋に宿泊。かつての安井にとっては“力試しの場”でしかなかった乗鞍は、今、彼に何を語るのか。

2022.10.03

column

メカニック小畑の言いたい放題(Vol.6) |2022ツールの機材を分析する

自転車界最大の祭典、ツール・ド・フランスが今年も終わった。選手の世代交代、戦法の変化、新世代王者の誕生。レースの内容が大きく変化したと同時に、機材も変革を迎えている――。なるしまフレンドのメカニック小畑 郁が、編集長の安井行生とともに自転車業界のアレコレを本音で語る連載「メカニック小畑の言いたい放題」のVol.6は、そんな2022ツールの機材について。昨年までは山岳で軽量なリムブレーキが使われ、総合優勝者も見慣れたリムブレーキバイクに乗っていた。しかし今年はディスク&エアロがツールを席巻。そんな状況をメカニック小畑はどう見るか。

2022.08.29