先日、シマノの105グレードのホイール、WH-RS710-C32/C46の試乗をbaruさんと一緒に行いました。アルテグラホイールの比較試乗も担当していただきましたし、その後アルテホイール(フロントC36、リヤC50という組み合わせ)を買われたそうなので、それらより3万円安い105グレードのカーボンホイールを評価するのに最適な人物だと判断したためです。

baruさんのアルテホイール試乗~アルテホイール購入までにはひと騒動(?)あったことはここでお伝えした通りですが、当然、WH-RS710の試乗でもスポークテンションのことは気がかりでした。そんなことを考えていたら試乗前にbaruさんから「もし可能であればテンションを測っておいていただけますか?」と連絡がきました。でも、残念ながら編集部にテンションメーター、ないんですよね……。

その前に、ちょっとここで試乗車/試乗パーツについて、評者としてのスタンスを考えてみます。

基本的に我々は、「代理店・メーカーは『このバイクをいいと思ってほしい』という想いを持って、最善の状態で貸してくれるはず」という性善説のうえで試乗をします。

でも中にはあまりよくない状態の試乗車も存在します。変速調整ができていない、ブレーキシューの角度がずれている、ブレーキシューの前後が逆、ケーブルルーティングがイマイチでレバーの引きが重い、ケーブルが長すぎてハンドリングがよくない、チェーンの長さが不適切、各部ボルトの締め付け不良、ブレーキラインのエア噛み、エトセトラ、エトセトラ。

このように、整備不良に近い状態であることは少なくありません。

もちろん、毎回きっちり仕上げてくださる担当者の方もたくさんいます。基本的なセッティングは当然のこと、チェーンやケーブルの状態も完璧。フレーム売りのモデルに関しては、僕が書いたインプレを読んで高評価を与えたタイヤやホイールに付け替えてくださったり。そこまで行くとほぼ“広報チューン”の領域ですが。

自転車、とくに繊細でギリギリなバランスの上に成り立つロードバイクは、メカニックの技術やわずかなセッティングの違いによって走行感が大きく左右されます。理想をいえば、毎回プロメカニックにお願いして、消耗品の交換を含めた重整備をすることでしょう。

でも現実的にはなかなか困難です。消耗品交換を含めてきっちりと整備をすると少なくとも数万円の費用と相応の日数がかかってしまいます。そもそも試乗車が借りられることがわかるのは数日前だったり、モノ自体のマニュアルが出回っていないこともあるので、整備中に万が一破損してしまった場合、補修部品がなく試乗そのものがお蔵入りする危険性もあります。

さらに、試乗車や試乗ホイールの貸出期間には限りがあります。おおよそ1週間から10日。試乗する時間、撮影する時間、天気などいろんな条件を考えるとかなりパツパツです。メディア試乗会であれば数時間しか乗れないということも珍しくありません。

だから僕らは、与えられた条件下で試乗するしかありません。
もちろん、必要な整備はします。パーツの取り付け状態の確認、変速調整、注油、簡単な掃除、そのくらいは最低でもやります。そうじゃないとちゃんとした試乗はできません。

そして、ホイールやコンポなどの銘柄はもちろん、タイヤの状態を見て、チェーンの状態を見て、マイナスとなる要素があればそれらを差し引いて評価をします。

「そんな状態で試乗してるのか。結構適当なんだな」という方もいらっしゃると思います。ただ、僕もライターを始めて約15年が経ちました。試乗したバイクは数えていませんが、500台はいかないくらい、ホイールは500ペア以上にはなっているでしょう。

そうこうしているうちに、いつしか評価対象物の状態やパーツアッセンブルなどの要素を排除し、自分なりに補正しながらの評価ができるようになりました。さらに、比較試乗であれば、対象物以外の条件をできるだけ統一しています。だから決して適当に試乗をしてるわけではありません。

スポークテンションに関しても考え方は同じです。届いたホイール1つ1つをお店に出して計測し振れ取りとセンター出しをして、最良の状態で試乗することが理想だと考えています。ただ、貸出期限があり、取材に割ける時間と人的・金銭的リソースが限られたなかで、すべてに対応するのはなかなか難しいのが現実です。

それが理想ではないことはもちろん僕らも把握していますが、今後は少しでも良い状態で試乗ができるようにしていくつもりですし、現状を少しでもよくしようと、事あるごとに整備状況に関してはメーカーにお願いないし報告を行っています。

そんな状況の中で試乗記は書かれていること、ご理解いただけると嬉しいです。

(安井)