その昔(また昔話!)、マウリツィオ・フォンドリエストにサインをもらったことがあるんです。2002年の東京国際自転車展だったと思います。先輩に連れられて行ったフォンドリエストのブースで、イタリア語が話せる先輩が「この若いロード乗りと握手してやってくれ」と。大きく、温かい手でした。
知的な眼鏡の長身フォンドリエストは、深く優しい声で「いい選手になりなさい」と言ってくれました。その頃は、ロード乗り=選手という等式が成り立つ時代だったんです。そして、世界選手権を走る写真のポストカードに、丁寧にサインをしてくれたのです。

そのときから、フォンドリエストは僕の中でちょっと特別なブランド。今はやや存在感が薄いですが、当時はそれはそれは華やかなイタリアン・ロードレーサーでしたから。その後、僕はTF1とステータスカーブという2台のフォンドリを手に入れることに(後者はまだ持ってます)。

なぜそんなことを思い出したかというと、今年のサイクルモードが幕張メッセから東京ビッグサイトに会場を移したから。ビッグサイトのあの逆四角錐×4の建物を前にして、20年前のあの思い出がフラッシュバックしたんですね。

そんな思い出に浸りながらLa routeチームが足を踏み入れた2022年のサイクルモード、見どころはなんといっても国産タイヤメーカー2社、パナレーサーとIRC(順不同)のガチンコ対決でしょう。

先日発表されたパナレーサーのアジリスト。効果的なプロモーションも相まって話題騒然の新型クリンチャーです。一方、IRCもサイクルモード2022で新型クリンチャー、アスピーテプロを発表します。最新チューブレスタイヤに肉薄する、とこちらも鼻息荒い(順不同)。

国産メーカーがここまでバチバチになるのは珍しい。コンポも、フレームも、ホイールも、国産メーカーは各々微妙に立ち位置が異なり、独壇場だったり、ターゲットがずれたり、シェアが違いすぎたりと、ここまでの直接対決にはなりません。
しかしタイヤは違います。IRCとパナレーサー(順不同)は思いっきりライバル関係で、しかもほぼ同時期にほぼ同じコンセプトの製品を発表。

「発売はP社さんに先を越されましたが、中身は……」
「いやいやウチのも自信作に仕上がってるんで……」

と、静かに火花を散らされておりました。

La routeでは、どちらのタイヤにも忖度なしの評価を下す予定。
今サイクルモードではミシュランもパワーカップを展示してましたし、ある情報筋からある海外メーカーも高性能クリンチャーをもうすぐ発売するとの噂もゲットしました。今年はクリンチャー市場がアツくなりそうです。

(安井)