最初はピックアップで、もっとライトな記事にしようと思ってたんです。スペシャライズド・ディヴァージュSTRのインプレ。そのつもりで試乗して、撮影して、返却しました。

でも、書いてるうちに徐々に文字数が増えてきて、2016年にベルギー/フランスで行われた5代目ルーベ発表試乗会のことや、それに搭載された初代フューチャーショックの印象や、そのとき話を聞いたエンジニアの言葉や、試乗の最後に訪れたルーベのヴェロドロームの風景なども思い出されてきて、それらを盛り込んでいるうちにどんどんどんどん長くなり、テーマもいつのまにか「自転車の振動吸収性と快適性と速さ」というものになり、いつしか1万3,000文字超の長広舌に。

というわけで、ライトなレビュー記事であるピックアップではなく、本格的な試乗記&快適性論に昇格させることにしました。返却するまでピックアップのつもりだったので、走りの写真もありませんが(笑)、スペシャライズドがプロトタイプの画像を用意してくれてるし、写真もなんとかなる。

この臨機応変・変幻自在がウェブ記事のいいところです。雑誌ならページ数と文字数が決まっているので、「書いてるうちに伝えたいことが出てきたから増やして」ということがほぼ不可能(サイスポの連載、自転車道では何度もそれで編集部と押し問答しました)。

しかも、「こんなマニアックなこと書いてもLa routeの読者の方々は面白がってくれる」という確信があるので、書けるんです。「そういうマインドで書けるメディア」で文章を書くことができて、僕は本当に幸せです。
まぁ、この原稿内で述べている、振動吸収性を高める各機構の特徴、バネ下の考え方、快適性と速さの関係などは、(これまで各メーカーの技術者に聞いた話がベースになっているとはいえ)かなり単純化したものですし、かつ主観も大いに入ってます。でも、この文章が皆さんが「自転車という乗り物の走り」を考えるための糧となれれば、書き手として嬉しいです。

(安井)