初代フューチャーショックのもやもや

パリ~ルーベに登場する有名な石畳を走らせてもらい、2日間のライドの最後にはその伝説的なレースのゴールとなるヴェロドロームを一周させてもらい、ライド後にはパリ~ルーベを完走した選手のみが使うことを許されるというあの有名なシャワー室を見学させてもらうという、自転車乗りとしては夢のような体験をさせてもらったにもかかわらず、頭の中のもやもやは晴れることはなかった。

2016年、ベルギー/フランスで行われた5代目ルーベのプレスローンチでの出来事だ。
もやもやの原因は、新型ルーベに搭載された初代フューチャーショックである。
フォークのコラム部にサスペンションを仕込み、ハンドルをコラム軸方向に上下させて振動を吸収する可動機構。

いや、理路としては正しいのだ。
快適性を上げる策としても、荒れた路面を速く走るため・・・・・・の術としても、フューチャーショックは全くもって正しい。

もし、振動を全く吸収しない自転車があったら? 例えば3cmの凹凸をタイヤが超えると、振幅3cmの上下動はそのままハンドル、サドル、ペダルまで伝わり、人間の体も上下に3cmユサッと揺れる(実際は腕や脚や筋肉・脂肪の層で多少は振動を吸収するが)。67kg(日本の成人男性の平均体重)+バイクの車重=75kgほどの重量物を3cm持ち上げるにはかなりの労力を要する。ペダリングパワーがそれだけ消費されているわけである。「凹凸を超える」とは、実は凄まじいエネルギーの無駄なのだ。

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