私的なTOJの思い出と、東京ステージの迫力
俺がやってる自転車って、こんな感じなんだぜ。
非自転車乗りの女友達に、「ロードレースとはどんな競技なのか」「どんな世界なのか」を説明するのに、TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)の東京ステージほどいい機会はありませんでした。
テレビでツール・ド・フランスを見せるのもいいですが、やっぱり目の前を選手が駆け抜けると、違います。
色とりどりのジャージ。
一陣の風。
大きな歓声。
その後に続く派手なチームカー。
誰だって、「わぁ!」となるでしょう。
昔は日比谷シティ前がスタート地点だったんです。日比谷公園をチームピットにして、日比谷通りを封鎖して。選手たちがスタートした後ろを必死に追いかけて大井埠頭へ。TOJ用シャトルバスで来た女友達と合流して、「お、サイスポの吉本、来てんじゃん」「あ、あれ今中大介だぜ」なんて言いつつ(お二方とも、呼び捨てですいません……若気の至りで)、スタート地点の大型ヴィジョンを見ながら、周回コースのハイスピードレースを観戦。迫力のゴールスプリントを数メートルの距離で味わって、終わったら品川でメシ食って解散。
サイクルモードとTOJ東京ステージは、関東にずっと住んでいた僕にとって、特別なイベントでした。
結婚してニョショウに自転車競技のカッコよさを伝える個人的必要性もなくなり、コロナの影響もあって何年も行ってなかったTOJ。今年も全4ステージと縮小されていますが、3年ぶりの有観客となったこと、そしてこの記事で取り上げたEFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチームの門田祐輔選手が出ることもあり、観戦に行ってきました。
環八のコンビニでLa routeメンバーと待ち合わせをして、ワイワイと自走で大井埠頭まで。近づくにつれ、目的を同じくした自転車乗りが多くなり、車道が交通規制され……と、あの頃を思い出すワクワク感。
今年も日比谷スタートは見送られ、大井埠頭周回のみとなりましたが、やっぱりいいですね、ナマのロードレースは。
同行したLa routeスタッフの高山(ロードレース初観戦)は、「自転車ってこんな速く走れるんですね」「コーナーであんなに倒せるんですね」と興奮している様子。これはテレビ画面からは伝わってこない迫力です。
プロトンの頭上を行き来するのは、羽田空港に離着陸する飛行機。
200トン以上もの大きな機体と、7kgほどしかない自転車とのコントラストが、青空に映えます。
世の中、必ずしも「百聞は一見に如かず」ではありませんが、ことロードレースに関してはその通りかもしれません。
レース中盤に発生した3人の逃げの中に、ピンクのジャージを見つけました。あの長い手脚はもしかしたら……やっぱり門田選手! 後でYou Tubeで見返すと、6週目に門田選手がすさまじいスピードで飛び出してました。
6歳のとき、家族に連れられて見に行ったTOJでロードレースに憑りつかれた門田選手。今、その先頭集団を走っている。一体、どんな気持ちなんでしょう。途中から追走の3人を加えた6人でのエスケープは最終周で捕まってしまいましたが、きっちりと仕事をこなしました。レース後にはサイン攻めに会い、「あ、門田選手だ」「今日ずっと逃げてた選手ね」という会話がそこここで。
帰り間際、お疲れ様でした、と声をかけると、「チームオーダーをこなしただけですから」と一言。
そこに宇都宮ブリッツェンの増田成幸選手が来て、笑いながら「これからは門田たちの時代だね」と。
1回り以上歳の離れた2人。4日間の闘いを終えて穏やかな表情の2人。
こんなシーンが見られるのも、現場に行ったからこそです。
レースがヒエラルキーの頂点ではなくなったと言われる今のスポーツバイク界。
でも、レースにしかない「自転車の美しさ」は厳然として存在する。
そんなことを再認識した2022年のTOJでした。
(安井)
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