“いい自転車”とは何か
アンカー・RL8Dの試乗記を公開しました。
原稿ではあえて触れなかったことがあります。
それは、“いい自転車”の定義です。
本来であれば、“いい自転車”なんていう曖昧な表現をはっきり定義せぬまま論を展開するのは褒められたものではないんですが、これに言及してしまうと長い文章がさらに冗長になってしまうので、避けました。なので、ここでちょっと補足したいと思います。
“いい自転車”は、もちろん個人や立場によって変わります。
メーカーにとってはそれこそ「売れる自転車」「利益率のいい自転車」がいい自転車だろうし、選手にとっては「速い自転車」がいい自転車でしょう。メカニックにとっては「組みやすい自転車」かもしれない。ある人にとっては「イタリアブランドであること」かもしれないし、「本国で職人が手作りしていること」かもしれない。世界一周する旅人にとってはなにより「壊れないこと」でしょう。
……なんてことをどっかで書いたなぁと思ってたら、この記事でした。RL8D評で言うところの“いい自転車”とは、こういうことなんです。それに、「乗りやすい」「疲れにくい」「脚当たりがいい」=「遅い」ではありませんからね。それを踏まえて読んでいただけると嬉しいです。
もう一つ。「プロフォーマット以降のアンカーは本当にいい」と書きましたが、「以前」もかなりよかったんです。アンカーは2008モデルからずっと試乗させてもらってますし、2006モデルのRHM9は自分でも買いましたが、どの年代もアンカーは乗り手に優しく寄り添う自転車を作っていました。
今から思えば、「以前」のアンカー各車には、プロフォーマットの萌芽があったんですね。
開発者が世代交代しても、アンカーの自転車作りには一貫した思想が流れているように感じます。流行に沿って思想をコロコロと変える尻軽なメーカーではありません。そういう意味では、アンカーはタイムとかなり近い存在なのかもしれません。
皆さん、“売れる自転車”と“いい自転車”、どっちに乗りたいですか。
(安井行生)
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