先日のDAYSでレポートをお届けした「オーシャンビューとパワースポットを巡るサイクリングツアー in 沼津市戸田」。

背中を押されるようなeバイク特有のアシスト感がまだまだ記憶に新しいところですが、このたび再びそんなeバイクに跨り、伊豆を巡る機会をいただきました。

今回参加したのは、eバイクで駿河湾と富士山の絶景が望めるシーサイドロードを行く、その名も「富士シーサイドサイクリングツアー」。伊豆の国市観光協会の協力のもと、前回に引き続き旅行会社大手のエイチ・アイ・エスと「道の駅 伊豆のへそ」に自転車体験施設「MERIDA X BASE」を構えるメリダが共同で企画したライドツアーです。

今回はMERIDA X BASEが発着点となっており、走行距離は約50kmと前回に比べて大幅にボリュームアップ。エイチ・アイ・エスの担当者さんによれば、「旅行好きな30代前後のアクティブ層がターゲット」ということで、より走りごたえのあるルートを組んでいるそう。もちろん今回も伊豆ならではの文化体験や、お楽しみの昼食などが組み込まれており、eバイクだからこそ満喫できる伊豆観光ツアーとなっています。

そんな「富士シーサイドサイクリングツアー」のメディア向けモニターツアーに、La routeチームも参加してきました。

今回のツアーのスタート地点となるMERIDA X BASEの館内。あらゆるジャンルのバイクがずらっと並ぶだけでなく、アクセサリーショップや屋内パンプトラックなども併設されています。

今回のツアーで乗らせていただくeバイクなのですが、どうやら前回乗ったクロスバイクタイプのモデルとは毛色が違うみたいで……。お貸しいただいたのはミヤタの「ロードレックス i 6180」というモデル。ドロップハンドルと太いタイヤを装着したeグラベルロードバイクです。

こちらが今回の相棒、ミヤタのロードレックス i 6180。太いタイヤとガシッとしたフレームワークが特徴。価格は40万7,000円。一緒に写ってくださったのは今回のライドの先導役、メリダジャパンの藤原 豊さん。

コンポーネントはフロントシングルの機械式GRX。油圧ディスクブレーキなのは、前回乗ったクロスバイクタイプの「クルーズ」と同様です。ご覧の通り650B×45Cのタイヤのおかげで、多少のギャップや道路の割れ目などは気にならない仕様となっています。

軽く試走してみて感じたのは力強いアシスト感。前回乗ったクルーズとはアシストの効きが違います。踏み込んだ瞬間のグイッと引っ張られるような感覚、これはロードレックスならではのものですね。

午前10時すぎ。参加者全員で簡単なブリーフィングを済まし、いざシーサイドツアーへ出発。

MERIDA X BASEからしばらく走ってひと山越えると、早速眼前には広大な駿河湾が。ここからは100%海沿いを走っていきます。位置関係的には走りながら駿河湾越しの富士山が望めるはずだったのですが……この日は富士山がすっぽりと雲に覆われておりました。残念!

「ほんとはあそこに富士山があるんだよな〜」。この日はイマジナリー富士山で我慢。

海沿いのワインディングを気持ちよく進んでいくと、じわりと上りがはじまります。ここからいよいよeバイクの本領発揮という感じ。

少し上って目線が高くなると、海はまた違った表情を見せてくれます。

実際かなり長い上りでした。しかしペダルバイクでは辛いだろうな、などと考えているうちに、苦もなく登頂に成功。eバイクゆえ脚のダメージもゼロです! そこから少し下ると、折り返し地点となる「おくだ荘」に到着しました。

ここには伝統的な手法そのままに、海水を薪で焚いて作る「井田塩いたしお」を生産する工房があります。今回のツアーではそんな塩作り現場の見学と、さらに出来上がったばかりの塩をすくうという塩作りの最終工程も体験させてもらえるのです。ちなみに、こちらで生産される塩は、日本各地の星付きシェフが愛用する高品質なものだそう。このツアーでしか味わえない貴重な体験に、La routeチームもテンションが上がりました。

仲良くケーキ入刀のようにも見えますが、網ですくっているのは出来たての塩。薪が常に焚かれている工房内部はサウナ状態で汗が止まりませんでした。

塩すくい体験のあとは、そのまま工房前のスペースで昼食タイムへ。
おくだ荘は元々民宿で、地元の食材を使ったおいしい料理も提供していました(現在は塩の生産に注力するため休業中)。今回のツアーの昼食では、そんなおくだ荘特製の料理がふるまわれました。

塩すくい体験からの昼食。シンプルなおにぎり(もちろん井田塩を使った塩むすび)、豚汁、ところてん、唐揚げ……。どれも美味しかったのですが、からあげに井田塩をちょっとつけていただくのがオススメ。

メインの鶏の唐揚げは、井田塩の塩麹で下味をつけ、ふっくらと揚げた一品。ジューシーかつ程よい塩味で、新米のおにぎりがバクバク進みます。山で採れた山菜や、目の前の畑で育てた大葉など、食材はどれもこの周辺で採れたもの。見渡す限り広がる田園風景に癒されながら、五感すべてで井田の恵みを享受できる昼食でした。

右に見える白い建物が井田塩を作る工房。のどかな景色の中、メリダのテントの下でピクニック感覚のランチタイムを楽しみました。

さて、ここからは折り返してMERIDA X BASEへの帰路となります。
ほぼ来た道を引き返すルートなのですが、通ったはずの道も逆から走ると「あれ?こんなところ通ったっけ?」「こんな景色もあったんだ」といった発見もあって飽きることはありません。

そんなダウンヒルメインの後半、eバイクがそれまでと違った顔をのぞかせました。

大きく違いを感じたのがタイヤの存在感でした。上っているときは気にならなかったのですが、ところどころ舗装が剥がれていたり、大きめの穴が空いていたりと、実際の路面はなかなかスリリングな状況。もはやラインの選択肢がないほど荒れている箇所もあったのですが、45Cもあると何も考えずにまっすぐ突っ込んでいける安心感がありました。

またグラベルタイヤはそれ自体が重く、舗装路での走行感覚も重かったりしますが、そうしたネガティブ要素も、eバイクのアシストが消してくれるんです。eバイクと太いタイヤは相性抜群でした。

そうしてダウンヒルを存分に楽しんでいると、駿河湾に突き出た特徴的な岬を持つ「大瀬崎」に到着。

帰り道には大瀬崎にある大瀬神社を参拝。海の透明度の高さにも驚かされます。

海水浴場もあり大勢の人で賑わう中、ツアー一行は大瀬神社を参拝。国の天然記念物に指定されているビャクシン樹林や、海の間近にもかかわらず淡水のため、伊豆の七不思議に数えられている「神池」などがあり、ちょっとした非日常体験ができる名勝となっています。ちなみに大瀬神社では、バイクの刺繍が入った走行御守も販売されていて、サイクリストに人気なのだとか。

スポーツバイク風の刺繍があしらわれた走行御守(800円)。参拝の際にはぜひゲットして、安全な自転車ライフを!

大瀬神社で心が洗われたあとは、MERIDA X BASEへと一直線。メリダジャパン藤原さんが、往路とは少し違った景色が楽しめるルートも選びながら、最後まで安全に先導してくれました。

ツアー一行がMERIDA X BASEに到着したのは午後5時。移動時間4時間を超えるライドでしたが、道中ではおよそ7〜10kmごとに補給スポットが用意され、休憩もしっかり取ることができました。さすがに50km以上も走ると、eバイクとはいえ疲労を感じますが、当日は猛暑日だったこともあり、ペダルのこぎ疲れというよりは日焼け疲れという側面が大きかったような。実際にツアーが催行されるのは9月〜11月なので、その頃にはもっと楽に走り切ることができるはずです。

さて前回の戸田ツアーに比べても、今回はeバイクで長い距離をガッツリ走ることができました。そこでスポーツサイクルとしてのeバイクという視点で、自分なりの雑感を付記しておこうと思います。

今回もダウンヒルの一部で隊列を離れ、少し速度を上げて走ってみました。
すると、右、左とコーナーをクリアしていくうちに、何やらハンドルがビクビクと落ち着かない感覚がありました。

これはヘッドが立っていたり、フォークのオフセット量が少ないバイクで感じる挙動なのですが、ジオメトリ表を見ても特筆するほど変わった値ではありません。おそらくインチューブバッテリーの影響か、ヘッド付近の重心が高くなっているがゆえの挙動なのではと想像しました。

もちろん、eバイクそのものの挙動が常に不安定だということではありません。ただ、通常のロードバイクの乗り味をそのままeバイクに期待すると、さすがに違和感を覚える場面があるということ。普段ロードバイクに乗っている方は、eバイクなりの乗り方にアジャストしていく過程も楽しんでみるといいのではないでしょうか。

クロスバイクタイプのクルーズ6180(左)と、グラベルロードタイプのロードレックス。eバイクも乗る人の趣向や使うシーンに合わせて、選択の幅がどんどん広がっている印象。

僕自身、たった2回のeバイク体験にすぎませんが、気づくことや驚きはたくさんありました。乗る人の年齢や性別、体力の有無などを問わず、電気の力で今まで見たことのない景色へと誘ってくれる。そんなeバイクは、サイクリングへの間口を大きく広げてくれる存在だということを、この2回のeバイクツアーで確信することができました。またいつか、eバイクで旅ができることを楽しみに……。

最後に今回の「富士シーサイドサイクリングツアー」、一般向けには9月24日(土)、10月8日(土)、11月19日(土)に3回にわたって開催予定です。興味を持たれた方は、エイチ・アイ・エスのこちらのサイトにぜひアクセスしてみてください。

(三宗)