「マユコはね、いつもマユコなのよ」
本日公開した元女子プロロードレーサー、萩原麻由子さんのインタビュー記事はいかがだったでしょうか。人物の単独インタビューとしては、最強ホビーレーサーと名高い高岡亮寛さんに次ぐ2人目。今回の記事は、これまでの人生の大半をロードレースに捧げてきた萩原麻由子さんをより多くの人に知ってもらいたいという思いから、特別に期間限定(追記/3月8日まで)で無料公開することにしました。記事のシェアも大歓迎です。
読者の皆さんもご存じの通り、日本におけるロードレースは超がつくほどマイナーです。La routeコアメンバーの安井や藤田はロードレースも好きですが、正直なところ僕は有名な選手の名前を知っている程度の知識しかもちあわせていません。そんななか萩原さんにインタビューすることになったのは1月中旬、小俣雄風太さんの一言がきっかけでした。
「彼女は今話を聞くべき人だと思いますよ」
ロードレース、女子、ジロ・ローザでの優勝。いろんなキーワードが頭の中を駆け巡ったあと、プロデューサーとして「おもしろくなりそう」という勘が働きました。そのあと小俣さんのツテでなんとかアポを取り付けて(後述)、晴れて小俣さんと一緒に萩原さんがいる群馬に向かうことになったのです。あ、余談ですが、La routeの企画は雑談のなかから生まれてくることが多いです(笑)。
待ち合わせ場所だったサイクルショップタキザワには、僕らよりも先に萩原さんが到着していました。スラリとした長身で「海外でプロの自転車選手として活躍していた」と言われても誰も信じないほど華奢。これまで僕もいろんな業界のいろんな人にインタビューをさせてもらいましたが、世界で戦ってきたとは思えないほどの控えめな姿勢にも驚きました。
「マユコはね、いつもマユコなのよ」
そう話してくれたのはサイクルショップタキザワの奥さん。アジア自転車競技選手権大会で日本人女子として初優勝したときも、ジロ・ローザでステージ優勝したあとも、彼女は一度もおごることはなくいつも通りのマユコだった、と。
萩原さんはどこかつかみどころのない雰囲気と彼女特有の間をお持ちなんですが、自転車のことになると「パチンッ!」とスイッチが入ったように鋭い目つきになるのも印象的でした。
とはいえ、インタビューしたのは引退を発表した数日後。言葉の端々から迷いのようなものを感じたのも事実で、よくよく聞けば今回のインタビューも断るつもりだったそう。インタビュー後、どこまで本気かわからないですが、「つまらなかったらボツにしてくださいね」と何度も僕らに言うのです。本当に世界で戦ってきたの? とこちらが聞き返したくなるほどの謙虚さなんです。
9:00集合で撮影してインタビューして、まだ聞き足りないことがあったのでランチ後もまたインタビュー。彼女が練習場所にしていた赤城神社にも足を運びました。帰路についたのはなんと19:00過ぎ。通常のインタビューがどれだけ長くても2時間程度なのを考えるとものすごく濃密な時間でした。
でも小俣さんの当初の言葉通り、萩原さんの話は世界で戦ってきた人特有の重みがあり、門外漢の僕を引き付けるほど深く、濃かった。あのときの取材の空気感すべてが、小俣さんの原稿に表れていると思います。萩原さんのインタビューを提案し、あの膨大な時間を素晴らしい原稿にまとめてくれた小俣さんには感謝しかありません。
タイトルの「夢の続きを」は、萩原さんに向けたエールでもあります。ロードレースにこれまでの人生をささげてきた萩原さんを、この記事を通して一人でも多くの人に知ってもらいたいと思ったし、なにより彼女のこれからの人生が実り多いものになることを願ってやみません。
(栗山)
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