スカピンというイタリアのスチールフレームメーカーを知っている人も少なくなってしまったかもしれません。インターネットが世の中を完全に変えてしまう、その少し前には勢いを失っていたため、ウェブ上にもあまり情報が残ってません。検索をかけると、スカーレット・ピンパーネルというミュージカル作品が先に出てくるくらいでして。

スカピンが元気だった頃も決してメジャーなメーカーではありませんでしたが(でも忌野清志郎さんの自転車ショー歌にはスカピンが登場しますね)、僕はなぜかこのスカピンが気になって仕方がありませんでした。特に、軽量チューブをTig溶接し、ガツンとスローピングさせたレーシーなやつ。スマートでもお洒落でもないけど、濃厚イタリア風味の見た目も好みでした。

数年前、ちょっとした縁で手に入れたのが、eos7という中古のフレームです。2000年頃のトップモデルで、チューブはウルトラフォコ。トップチューブに入る「Racing Line」の文字が今となっては涙を誘います。スカピンは、アルミ全盛だった1999年、プロチームにフレームを供給してグランツールでスチールフレームを走らせていました。

コーラスで組んで「しなやかなのにレーシー」という走りを楽しんでいたんですが、コーラスをタイムのアルプデュエズ21ディスクに移植したため、半年ほどフレームの状態に。でもやっぱりあの走りをもう一度味わいたくなって、中古の11速コーラスを手に入れて、組み直しました。

時代考証的には微妙な組み合わせですが、R-SYSなんかを付けたりするとすげぇよく走るんです。特に登坂路でのダンシングの軽さはかなりのレベル。ということで、久々のスカピンで一日中山を楽しみました。

当然、スカピンはもうスチールフレームなんか作ってません。ブランドはまだ残っているようですが、調べてみたらe-MTBを売ってました。もともとスチールのMTBフレームもたくさん作っていたので、らしいと言えばらしいのかもしれませんが。

重くて、古臭くて、ヘンな名前で、マイナーで、1mmもエアロじゃない。
でも、気持ちよくて、楽しくて、扱いやすくて、乗りやすい。
もう、こんなバイクが生き残れるような寛容性を、今のロードバイク界は持っていないんでしょうね。

(安井行生)