地震や台風などには心の準備をしていたつもりでしたが、まさかウイルスによって世界中がこんなことになるとは思ってもいませんでした。
なんとなくライターで食っていくんだろうなぁとは思っていましたが、まさか自分が会員制メディアを立ち上げて編集長になるとは思ってもいませんでした。

そんな2020年、最後の記事をアップしました。吉本・安井に加え、鏑木 裕さんをゲストに迎えた三者鼎談です。テーマは「2020年の自転車界」。

冒頭で鏑木さんが「僕なんかもう『いかに人生をフェードアウトしていくか』みたいなことがテーマになってるから」と言われました。
いつだったか吉本さんも、「物欲がなくなって、どんどん機材を手放してる」と仰られてました。最近は「アスペロ一台あればもういいなぁ」なんて、さらに解脱されつつあるようです。
僕がもう数歳若ければ、そんな2人を見て「オヤジくせぇなぁ」なんて思っていたところですが、40を目前にすると、彼らの言うことがなんとなく理解できるようになっちまいました。

今まで半ばコレクション的に集めていた機材や、いくつも買い集めていた廃版のパーツを、「たぶんもう使わないから」といくつか手放し始めています。持っててもしょうがない。そんなふうに思うようになったんです。
人生はやっと折り返し地点ですが、自転車乗りとしては終盤ですからね。
試乗の仕事だっていつまで続けられるかわかりません。まぁ10年後はやってないでしょう。

徐々に無我の境地に近づいていく彼らのような先輩たちがいてくれて、心からよかったと思います。彼らを道標にして、これからの自転車人生を生きてゆけるからです。彼らは自転車乗りとしての恩師です。

とはいえ、僕はまだ(ギリギリ)30代。機材欲はさほど衰えていないわけで、この前もちょっとした機材遊びをやりました。
ディスクロードの完成度を図る度量衡として試乗記に度々登場するキャノンデール・スーパーシックスエボ(ただし2016年式の先代)を、R9100系デュラからカンパのコーラスに組み替えてみたんです。

先代スーパーシックスエボは、先々代より剛性を上げ、「しなやかで一体感のあるライドフィール」から、「スパッと動く俊敏性の高い走り」へと変貌したモデルです。ハンドリングも剛性感も軽量高剛性フレームらしくシャキッとしたもの。

最初は何も考えずにデュラで組んでたんですが、「このフレームならカンパのタメのある操作感のほうが合うんじゃね?」と思い立ったというわけです。
これがなかなか正解で、ちょっとキツめなフレームの性格をカンパの優しい操作感が緩和してくれて、バランスがとれたように思います。

ただしスーパーシックスエボのBBは、PF30Aなんていう独自規格。カンパニョーロ対応のPF30A用BBなんてそうそう手に入らないので、BBは24mmシャフト用のまま。とはいえカンパ仕様のバイクにシマノクランクはいかがなものかと思い、とりあえずローターの3Dクランクを突っ込んでおきました。このフレームとクランクとの相性は今後煮詰めていくことにします。

今年最後の記事を書き終えた翌日は、組み替えたばかりのスーパーシックスエボで箱根へ。
ホイールは、前輪:ニュートロン、後輪:ヴァントゥーという、お気に入りの組み合わせ。
最近はつばきラインばっか上ってたんですが、久しぶりに旧道にハンドルを向けます。七曲り(本当は十二曲がりくらいある)でインナーローを踏み倒し、一旦箱根湯本まで下って、今度は国道1号で芦ノ湖まで。箱根はこういう遊びができるから楽しいですね。

標高を上げていくと、もう息が真っ白。
年内にもう1回くらい来たいなぁ。

(安井行生)