後付け電動アシストが描く未来
先日、ワイズロード新橋店でeバイクのプレスセミナーが行われました。
今回はワイズロードの運営母体となるワイ・インターナショナルが主催ということで、コンテンツは2つありました。ひとつは、販売店の立場からeバイクの市場動向とトレンドを説明してくれるセミナー。もうひとつは、ホンダとワイズロードとのパートナーシップで生まれた後付け電動アシストシステム「SmaChari(スマチャリ)」の体験会です。
僕が会場に到着するとおなじみの自転車メディアのほかに、某テレビ局の経済ニュース担当のクルーの姿も。eバイクというモビリティへの関心はもちろんですが、その分野に四輪と二輪のビッグメーカー、ホンダが参入したことにより、一般メディアからも注目を浴びていたのです。
まずはワイズロード新橋店店長の田渕喬介さんによるeバイクセミナーからスタート。
冒頭でeバイクの歴史についての話があったんですが、そもそもeバイクのルーツとなる電動アシスト自転車を世界で初めて商品化したのはヤマハ発動機。「PAS(パス)」という商品をご存じの方も多いでしょう。
初代のパスが発売されたのが1993年なので、今年は電動アシスト自転車の誕生からちょうど30年だったんですね。ちょっと気になってヤマハの公式サイトを覗いてみたら、こんなページもありました。
セミナーでは、日本と世界のeバイク事情や、法規適合の基準といった基礎知識のおさらいに加え、ワイズロードにおけるeバイクの販売状況の説明がありました。ちなみにワイズロードでは、毎年5%程度のペースでeバイクの売上が伸びているのだとか。購入層としては30代~50代が全体の7割以上で、そのなかで最も多いのは40代だそうです(ドキッ)。
そしてこの日の注目バイクは、コーダーブルームのレイルアクティブにスマチャリを組み込んだ、製品化第1弾、「RAIL ACTIVE-e(レイルアクティブ-e)」。製品の概要についてはこちらのDAYSで詳しく触れていますが、この日は公道での試乗ができると聞いて、個人的に楽しみにしていました。
……しかし、直前になって試乗中止の連絡が。
聞けば、法規適合上は問題ないものの、当日までに正式な型式認定の通知が届かなかったとのこと。ということで、やむなくローラー台に乗せての体験となってしまいました。
で、一応、乗ってはみたんですが、ちゃんとしたインプレをお伝えするのは難しく……。スマートフォンアプリでアシストをOFFからONにすると、ナチュラルにアシストが効いていくのは分かりましたが、4段階で変えられるパワーやレスポンスなど、細かいアシスト設定の切り替えによる走りの違いまでは、ローラー上では分かりにくかったです。残念。
またeバイク専用設計ではないクロスバイクに後付けで電動アシストユニットが組み込まれるので、走りの軽快感や剛性感にどんな影響があるのか、また過去に乗った通常のeバイクとどんな違いがあるのか、といった点も気になっていたんですが、今回は計りきれず。
なお、型式認定が正式に取得でき次第、公道での試乗会も開催予定とのこと。公道で走れる日を楽しみにしつつ、その際にはぜひノーマルのレイルアクティブと比較試乗ができたらいいなぁ、なんて思ったりもしました。
せっかくの機会なので、セミナーに同席していたワイズロードのマーケティング部部長・青木亮輔さんに、スマチャリについてより詳しくお話を聞いてみました。
すでに周知の通り、電動ドライブユニットは既存のメーカー(非公表)の製品で、ホンダの技術が投入されているのは、ユニット制御のためのベースシステムとスマートフォンアプリの部分です。
「ホンダさん独自でドライブユニットの設計をしなかったのは、まず、現在の自転車市場にマッチした価格でスマチャリを実現したいという考えから。今回のスマチャリのパートナーシップにおいては、ホンダさんには、すでにお持ちのノウハウを生かせる制御システムやアプリの構築に特化して担当していただき、それ以外の部分は自転車のエキスパートである私たちが担うという役割分担になっています」
テスト段階でレイルアクティブ-eに試乗されたという青木さん。その乗り味は?
「アシストの力で走らされている感覚ではなくて、自分の踏力に程よくアシストをプラスしてくれている感じがしました。また日本の法規に合わせて24km/hでアシストが切れる設計になっていますが、急に切断されるのではなく、違和感なくアシストがフェードアウトするようにセッティングされています。だから足当たりも自然で安全に走れるという印象。また、ベース車両本来の性能もスポイルしていないと思います」
レイルアクティブ-eの車重は約15kg。一般的なeバイクだと20kg前後のものも多いですから、その軽さが走りにアドバンテージをもたらすのは想像に難くありません。また、ホンダの技術が投入されたというアシスト制御についても、あらためて実際に乗って確かめてみたくなりました。
会場には同じくマーケティング部の永平宏行さんもいらっしゃいました。ここで、ちょっと突っ込んだ質問を。電動アシストユニットの後付けによるデメリットもあるのでは……?
「あるとすれば、ひとつは見た目ですね。バッテリーが外に露出しているのが気になるという方がいらっしゃるかもしれません。あとは、ユニットを取り付けたことでBBのセンターからペダルまでの位置が左右均等ではなくなってしまうんです。そのため純粋なスポーツバイク同様の走行を楽しんでもらうには、まだ改良の余地があると思います」
なお、後付けによる重量増は5kgほどとのことですが、バイク側に特別な補強や加工は必要ないんでしょうか。
「そういったものは必要ありません。体重が5kg違う人が乗ると考えれば、バイク側への負担や影響はほぼないでしょう。ただ、電動アシストユニットの固定には万全を期しています。このユニットは元々、BBの下に吊り下げるようなかたちで固定される仕様ですが、今回のレイルアクティブ-eではセンタースタンド用の固定台座にまで支持部を伸ばし、そこでもボルトどめをしています」
ほう、なるほど。……と、いろいろな話を聞けば聞くほど、スマチャリへの関心は募るばかり。だって、電動アシストユニットを既存のバイクに後付けするというシステム、めちゃくちゃ夢があると思いませんか?
高齢者になっても安全に自転車に乗りたい、体力が衰えてもロングライドやヒルクライムを楽しみたい、日々の通勤や通学をもっと楽にしたい。こうした願望は、スマチャリでなくとも、既存のeバイクで叶えられます。でも、スマチャリの面白いところは、
ずっと乗らずに放置していた自転車を、eバイクとして蘇らせたい。
最近体力が落ちたから、通勤車だけでもeバイクにしたい。
奥さんに買ってあげた自転車を、やっぱりeバイクにしてあげたい。
といったように、過去や今置かれている状況から、未来をパッと変えられるシステムだということ。
現時点では、完成車としての販売に限られるスマチャリですが、いずれはユーザーが持ち込んだ自転車に電動アシストユニットを取り付ける販売形態も構想中とのこと。先の青木さんも「ここ1、2年ではなく、もっと長いスパンで自転車の可能性を広げていくプロジェクトなんです」とおっしゃっていました。
今現在、元気にロードバイクに乗られている人にとって、スマチャリは無縁のモノと感じる方は多いでしょうし、この先も本当にそれを望むかどうかはまだ分かりません。でも生涯サイクリストであるために新たな選択肢が生まれようとしていることは、ポジティブに歓迎したいと思います。
(高山)
archives
- 2024年10月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月