3Dプリンターバイクが世界を制す?
🕗 20:00 CEST/19:00 BST
📆 Saturday 8th October
🇨🇭 Grenchen, Switzerland
🏟️ @TISSOT Velodrome@GannaFilippo vs. The UCI Hour Record timed by TissotTime to go all in 👊https://t.co/R9IuXSQJ6G pic.twitter.com/CC7C4atCG0
— INEOS Grenadiers (@INEOSGrenadiers) September 16, 2022
上記ツイートの通り、ヨーロッパ時間の10/8(土)20:00~(日本時間だと10/9(日)3:00~)、イネオスのフィリッポ・ガンナがアワーレコードチャレンジ11時間のうちにひとりでトラックをどれだけ走れるかを競う。を行うと発表されましたが、そのときに使用されるTTバイク「BOLIDE F HR 3D(ボリデ F HR 3D)」がついにベールを脱ぎました。

「BOLIDE F HR 3D」はフィリッポのために専用設計されており、強度と剛性、エアロダイナミクスを両立させつつ、ミリ単位でのサイジングを可能にするために、3Dプリンターを使って製造されたとのこと。技術的なトピックスは数えきれないほどあるので、ここではLa route的に気になったポイントを絞ってピックアップします。

まずはフレームとフォークの素材について。実はこれ、カーボンではなく「Scalmalloy」と名付けられた、スカンジウム、アルミ、マグネシウムの高強度合金。つまり金属なわけですが、これを3Dプリンターで製造しているそうです。
製造を手掛けるのはメトロン社(初めて聞く名前です)で、ドイツの3D金属プリンターのパイオニア「EOS」の「M400」という大型3Dプリンターを使って行われるようです。
フレームは一度に製造されるわけではなく、フロントトライアングルが3ピース、シートステーとチェーンステーが2ピースの合計5ピースからなり、それを航空宇宙産業用のエポキシ樹脂で接着しているのだとか。写真は表面仕上げの工程でしょうか。
カーボンにしない理由はいくつかあると思われますが、「金型を作らないことによる時間短縮」「同じく金型を作らないことによるコスト削減」、そして「形状の自由化」でしょう。

フロントホイールのハブは100mm→69mmへ、リアホイールハブは120mm→89mmと狭められており(F100mm、R120mmはトラックバイクでおなじみの数値)、さらにBBも70mm→54mmへ。前面投影面積をわずかでもさげたいという技術者の執念が感じられます。
フレーム形状は、UCIの「3:1」規制が撤廃されたので6:1や8:1という翼型形状が採用されている模様。

そしてシートチューブに注目。
のこぎり形状はプリンストンカーボンワークスやZIPPのホイールでおなじみですが、ピナレロはシートチューブに採用しています。ザトウクジラの結節(ヒレ前部にある突起)から着想を得て自転車に応用したとのこと。目的はもちろん空気抵抗削減のためです。
この手のバイクは「あ、どうせ1台だけのスペシャルバイクなんでしょ」と思われがちですが、「世界で販売」するとのこと。
この文言を見た瞬間「え、売るの? ほんとに?」と二度見したのはいうまでもありません。とはいえ、いつ、どこで、どんな形で販売されるのか現時点での詳細は不明だし、国内に入荷するかどうかもわかりませんが。
いやー、いっちゃってますね。完全に(誉め言葉)。
思えばピナレロは新しくなったドグマFのシートポストのやぐらを3Dプリンターを使ってチタンで製造するなど、積極的に3Dプリンター技術を市販車に投入しているんですが、技術、解析、低コスト化が進めば、「メイド・イン・3Dプリンター」なスポーツバイクが登場する日がそう遠くない未来にやってくるかもしれません。そもそも3Dプリンターならジオメトリも自由自在ですからね。
冒頭にも述べましたが、日本時間の10/9(日)3:00~、フィリッポ・ガンナがこの「ボリデ F HR 3D」を駆ってアワーレコードにチャレンジするとのこと(YouTubeでも配信されるそう)。大幅な記録更新となればピナレロの技術力が証明されることになるわけです。さすがにこの時間は寝てますが、今から結果が楽しみです。最後に別角度の写真もアップしておくのでスライドショーでどうぞ。
(栗山)
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