風洞実験を行う3台

3時間を超える「基礎編」と「応用編」のインタビューを終え、エアロロードに関する断片的な知識が体系的に整理されるという知的な快感を反芻しながら、近所の定食屋さんで昼食。食後の缶コーヒーでカフェインを注入し、午後はいよいよ最新ロードバイク3台の風洞実験である。

俎上に載せるのは、トレック・マドンSLR、スペシャライズド・Sワークス ターマックSL8、ビアンキ・オルトレRC。
なぜこの3台なのか。マドンとオルトレの理由はシンプルだ。第5世代を代表する車種であり、「ヘンなカタチしてるから」である。この2車はいずれも、前回の応用編でローンさんが説明してくれたように、「人間込みで空気抵抗を減らす」という思想に大きく踏み込んだものだ。第5世代の空力性能を実際にこの目で確かめたい。それが選定の理由である。

では、なぜターマックが入っているのか。スペシャライズドは、エアロロードであるヴェンジを廃版とし、先代ターマックで「軽さもエアロも手に入れたぜ」と息巻いた。その思想をさらに推し進めたのが現行世代のSL8である。しかも、「ターマックSL8の空力性能はヴェンジを超えた」と説明している。こんな素っ気ない成りをしながら、空力的にどれほどの実力を有しているのか、それを確認したかった。

以下、写真とそのキャプションで3台を紹介する。

乗車状態での実験では、疲労でライダーのフォームが崩れてしまっては正確な結果は出ない。自転車歴、体形、体力などを考慮した結果、南 秀治さんにライダー役をお願いした。元メッセンジャーで現在もレース活動を行う実力派サイクリストであり、モデル業やバリスタとしても活躍。さらにLa routeでも「メッセンジャー狂時代」などの記事を執筆してくれた多才な人である。なお、ウエア起因の誤差をできるだけ小さくするため、実験時はアソスのエアロワンピース、EQUIPE RS LE HOUDINI ROADSUIT S9 TARGAを着用。グローブ(RSR SPEED GLOVES)、ソックス(RSR SPEED SOCKS)、シューズカバー(RSR SPEED BOOTIES)もアソスの空力を意識した製品をお借りした。ヘルメットとアイウェアは南さん私物。

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