「60tのピッチ系高弾性炭素繊維(日本グラファイトファイバー社のYSH-60A)をはじめ最高の素材を惜しげもなく使用」(ルック・785ヒュエズRS)
「ピッチ系ウルトラハイモジュラスカーボンを使用、これにより十分な剛性と反応性を一層少ない材料で達成した」(キャニオン・アルティメットCF SLX)
「新世代の高弾性ピッチ系60t1Kカーボンを使用」(ボーマ・ヴァイドプロ)
「高弾性ピッチ系プリプレグの採用によりフレーム重量を 675g まで軽量化」(サーヴェロ・Rca)
「東レ、オゼオン社のテキストリームカーボンに加え、日本グラファイトファイバーのピッチ系炭素繊維を使用」(ファクター・オストログラベル)
自転車界でカーボンと言えば、東レである。
ピナレロがプリンス・カーボンで「東レの50tカーボンを使用」と大々的に謳ってから、東レは高品質カーボンフレームの代名詞のような存在になりつつある。実際にスポーツバイク界への供給量は東レが多い。
しかし最近、冒頭に列挙したように、ハイエンド帯を中心に様々なところで“ピッチ系炭素繊維”という単語を目にする機会が増えた。
このカーボン全盛期を生きる自転車ジャーナリストとして、カーボンについて最低限の知識を持っておかねばならないと、過去3回も東レに取材に行き、東レの技術者の方々の粘り強いレクチャーのおかげで、炭素繊維とCFRPに関してはなんとか素人レベルには達したと思っている。しかし東レが作っている炭素繊維は全てPAN系という種類である。
ピッチ系炭素繊維とは何なのか。
PAN系とはどう違うのか。
ピッチ系が自転車に使われるとどんな利点があるのか。
そんな疑問が脳を巡り始めたまさにそのとき、La routeの会員さんから「友人に複合材料の研究をしている者がおります。もしよかったらお会いになりませんか」とメールをもらった。その楽しい会合を機に、日本グラファイトファイバーというメーカーと繋がりができた。
日本グラファイトファイバー?
「日本グラファイトファイバーのピッチ系炭素繊維を使用し……」の、あの日本グラファイトファイバーだ。
そんなこんなで、会員さんのお知り合いを通じて、ピッチ系炭素繊維の開発・製造を行う日本グラファイトファイバーへと取材を打診。そういうことならば、と快諾していただき、姫路にある本社へと向かった。La routeでなければ実現しなかったであろう取材。縁に感謝である。