自転車と空気抵抗

安井:前回の基礎編では「空気抵抗の基本のキ」をお聞きしました。今回は応用編です。まずは、自転車と空気抵抗との関係について教えてください。

ローン:ご存じの方も多いと思いますが、自転車の空気抵抗って7~8割が人間によるものなんです。機材は2~3割。

安井:割合に幅があるのは体形やフォームやウエアや機材によって変わるからですね。よくよく考えると、人間って空力的には最悪な形状してますよね。胴体は風に立ちはだかる方向の横楕円。手脚はほとんど円柱。頭は球形。しかも両脚はぐるぐる回って空気をかき乱すし。人間は乱流発生器ですね。

ローン:そうです。自転車がいくらエアロな形状でも、超絶に非エアロな人間が上に乗っているので、自転車全体のCd値1どれほど空気がスムーズに流れるかを示す空気抵抗係数のこと。詳しくは基礎編を。を大きく改善することはできません。腕や脚を翼断面にするわけにはいきませんから。だから、自転車にとって空気抵抗低減の一番の近道は、正面投影面積を小さくする(=フォームを変える)こと。空気抵抗が一番低いのはスーパーマンポジションです。正面投影面積が肩と頭だけ(笑)。

安井:以前、屋内バンクで実走によるパワー計測実験をしたことがあるんですが、ブラケットポジションからドロップポジションにしただけで40km/h時の必要ワットがマイナス40W、DHポジションにしたらマイナス100Wほどになって魂消ました。とはいえ、フォームで空気抵抗を下げようと無理をすると今度は人間工学的に破綻しますね。前が見えなくなる、操縦性が低下する、呼吸がしづらくなる、パワーを出しにくくなる……。スーパーマンポジションだとペダリングもできない(笑)。

ローン:その通りです(笑)。

安井:そこで機材で少しでも空気抵抗を減らそうとエアロロードが誕生し、メーカーが試行錯誤を続けた結果、空気抵抗削減効果を明らかに感じられるようになりました。現在のエアロロードは本当に速いですからね。エアロロードが出始めた頃は「チャリンコの空力を多少改善したとこでたかが知れとるわ」という人が少なからずいて、自分もどちらかといえばそっちの一派だったんですが、その予測は見事に外れたわけです。当時は「ケーブル内蔵とかエアロハンドルとかほとんど意味ないだろ」って書いてましたから。お恥ずかしい。

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La routeの制作メンバーが気になるor自腹で買ったアイテムをプチレビューする「LR Pick up」。第16回は、コットンケーシングの手作りタイヤで有名なイタリアのチャレンジから発売されたクリンチャータイヤ「サンレモ」。タイヤにまで高価格化の波が押し寄せている今、3,630円のサンレモの実力は如何なるものか。今まで低価格帯のタイヤとは距離を置いてきたという編集長の安井が試す。

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