ピーター・デンクという人

マルチェロ・ガンディーニ、ダンテ・ジアコーサ、ジョルジェット・ジウジアーロ、パオロ・スタンツァーニ、ジャンパオロ・ダラーラ、フェルディナント・ポルシェ、ゴードン・マーレー、ジョン・バーナード、ケン・オクヤマ、桜井淑敏、中村史郎、由良拓也、水野和敏、貴島孝雄……。

自動車の世界では、高名な名物設計者が多く存在する。
レースの世界まで範囲を広げると、いくらでも名前を挙げられる。そのうちの何人かはデザイナーとして有名だが、ボディ表面の凹凸だけでなく、パッケージングを含めた設計に長けているという点においては、設計者といえる存在である。

しかしなぜか自転車業界、とくにロードバイクの世界では、個人としての設計者が表に出てくることは少ない。なぜだろう。市場規模の問題だろうか。

数少ない例外の一つが、ピーター・デンクである。
このページに詳しいが、ピーター・デンク氏は1990年からフレームの設計を始めた自転車エンジニア。1995~2007年にはスコットと契約、数々のMTBフレーム、CR1やアディクトなどの軽量フレームを開発する。
97年にDenk Engineering GmbHを設立。
2008~2014はキャノンデールやGTを擁するCYCLING SPORTS GROUPと契約し、スーパーシックスエボ(フレーム重量695gの初代と、2014年デビューの2代目)を設計、ロードバイクだけでなく、様々なMTBをサスペンションシステムから作り上げた。
キャノンデールで7年を過ごした後、2014年にスペシャライズドと契約を交わし、スポーツバイク界の最先端で活躍を続けている。

軽量化の神様。カーボンフレームの鬼才。
機材好きにとって、デンクの名は特別な意味を持つ。

だから、「エートスはデンクがやっているらしい」という噂が出回り始めたときから、彼に話を聞きたいと思っていた。そして、エートスが発表されたそのときから、La routeはスペシャライズド・ジャパンのスタッフに「デンクのインタビューをさせてほしい」と言い続けてきた。
La routeのメンバーがスタッフと顔を合わせる度に「デンクからの返事はまだですか」「デンクの件はどうなってますか」と、嫌がられるほどしつこく聞いた。メールの末尾には必ず「デンクの件もよろしくお願いします」と付けた。デンクとコンタクトをとってくれていた担当者がスペシャライズドを辞してしまったりと紆余曲折はあったが、ある日「インタビューの許可がおりました」とメールがくる。1年以上前から依頼し続けていたデンクへのインタビューが、やっと実現するのだ。

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