新生日本代表のマニフェスト

「ただ走って『世界の壁は厚かったです』と言って帰ってくるだけでは意味がない」

「今回はむしろ前週のワールドカップで一度“失敗”をさせておきたい」

「まずは監督として、全選手を万全な状態でスタートラインに立たせてあげたい」

 

La routeでは、昨年秋からシクロクロス日本代表を率いることになった竹之内 悠監督にインタビューを行い、来る世界選手権への展望を聞いた。

すでに大学での指導経験があるとはいえ、現役の選手とは思えないほどに冷静で客観的な言葉の数々は、竹之内監督が掲げる新生CX日本ナショナルチームのマニフェストのようでもあった。それらを聞こえのいいスローガンで終わらせぬよう、竹之内監督は遠征スケジュールの組み立てからスタッフィング、現地で連日行うミーティング内容の準備、選手に対する実践的アドバイスやきめ細かいメンタルケア、チーム全体の雰囲気作りなど、ありとあらゆる面で自らナショナルチームをリードし、シクロクロス日本代表の新たなスタンダードを作ろうと奔走することになる。

オランダ経由チェコ行き

今回のナショナルチームは、世界選手権の前週からヨーロッパ入りし、1月28日(日)に開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第14戦のホーヘルハイデにもエントリーした。限られた予算の中で遠征スケジュールを伸ばし、事前に本場のレースを経験させることで翌週の世界選手権に備えるのが狙い。各選手のリザルトは以下の通り。

男子ジュニア:成田光志40位(+3:23)、野嵜然新46位(+3:56)
女子ジュニア:日吉愛華29位(+4:23)
男子U23:柚木伸元36位(+4:12)、鈴木来人37位(+4:13)
女子エリート:渡部春雅53位(-1Lap)
男子エリート:沢田 時45位(-2Lap)

海外レースでは初のエリートからの出走となった渡部春雅と、平均スピードの高い男子エリートにあって序盤で落車による足止めを食らってしまった沢田 時はフルラップを走れなかったものの、他の5名はしっかりと完走しリザルトを刻んだ。

recommend post


interview

CX日本ナショナルチーム監督 竹之内 悠インタビュー|いま、代表を率いることの意味

全日本選手権が終わり、目前に迫ったUCIシクロクロス世界選手権。今年は男子エリートの沢田 時を筆頭に各カテゴリから計7名の日本代表が選出された。彼らを率いるのは、昨年秋にナショナルチーム監督に就任した竹之内 悠。若くして本場ベルギーで活躍し、全日本選手権5連覇をはじめ、国内外のシクロクロスで輝かしい戦績を上げてきたのはご存じの通り。また2019年からは母校の立命館大学で自転車競技部の監督を務めており、ナショナルチームの監督としてまさに適任と言える。今回はそんな竹之内“監督”にインタビューし、世界選手権への展望はもちろん、選手と指導者という2つの立場から日本のシクロクロス界が抱える課題や可能性、希望について聞いた。

2024.01.29

interview

野嵜然新(14)中学生|14歳の漸進

連載企画「若者たちの肖像」。今回話を聞くのは、昨年12月のシクロクロス全日本選手権U17を制した野嵜然新君である。この春中学3年生になったばかりの14歳に取材することになったのは、彼のブログ「ゼンシンあるのみ」で見せる、レースへの真摯な姿勢と熱量の高さ。全日本チャンピオンになった日、ブログに「12年間夢見てきた」と記してあるが、物心がついたときにはすでにはじまっていた、彼のレース人生とは一体どんなものなのか。日本一になるまでの道程とこれからのことを話してもらった。

2022.05.16

column

La route高山のCX世界選手権観戦記| 熱狂の渦の、ど真ん中へ

マチュー・ファンデルプールとワウト・ファンアールトの一騎打ちとなった「2023 UCIシクロクロス世界選手権」。あの凄まじいデッドヒートの現場に、La routeスタッフ高山がいた。毎年世界選手権を撮影しているフォトグラファー、田辺信彦さんからの同行のお誘いを受け、パスポートもない、語学力もない、シクロクロスも1年半前まで知らなかったという“ないない”尽くしの不惑ライターが過ごしたオランダ、ベルギーでの1週間。ただひたすらに見た、聞いた、感じた、世界選手権期間中のリアルなレポートをお届けする。

2023.02.27

column

全日本選手権自転車競技大会シクロクロス観戦記|宇都宮からはじまる新しい秩序

1月13日、14日に行われた「全日本選手権自転車競技大会シクロクロス」。2016年以来の宇都宮での開催となった今大会は、圧倒的な強さを見せた織田 聖の2連覇で幕を閉じた。男子エリートのみならず、U23やジュニアの各カテゴリーで繰り広げられた熱戦を、自身もシクロクロッサーであり、国内外のシクロクロスレースの実況を務めるジャーナリストの小俣雄風太が現地で見届けた。意地とプライドをかけて日本一の称号を目指した選手たちの姿は、彼の目にどう映ったのか。

2024.01.22

interview

梶 鉄輝(23)CXライダー・岡山優太(21)大学生|ヨーロッパで戦うための道標

白熱のシクロクロス世界選手権の撮影を終えたフォトグラファーの田辺信彦は、翌週もベルギーに残り、各地で行われるシクロクロスレースの撮影を続けた。そのレース会場で、思いもかけず2人の日本人シクロクロッサーと出会う。ヨーロッパでレースを転戦できる拠点を自ら作った梶 鉄輝選手と、シクロクロスの本場で武者修行していた岡山優太選手。なぜ2人はベルギーで走っているのか。どんな体制で戦っているのか。連載企画「若者たちの肖像」第6回は、異国の地で戦う彼らのバックグラウンドや今後の夢について、 田辺信彦が写真とインタビューを通じて迫る。

2023.07.03

column

La route高山のシクロクロス東京密着レポート|現実と苦悩の狭間にあるもの

2月11日・12日の2日間にわたって開催された「Champion System × 弱虫ペダル シクロクロス東京」。東京はお台場というキャッチーな場所を舞台に、海外の有力選手が参戦したり、地上波番組でも特集されるなど、国内屈指の華やかなシクロクロスイベントとして定着していたものの、2018年をもって開催中止。しかし今年、そんなシクロクロス東京がついに復活した。そこでLa routeですっかりシクロクロス担当となっている高山が、本イベントの期間中、オーガナイザーとして奔走したチャンピオンシステムジャパン代表の棈木亮二さんに密着。5年ぶりに復活したシクロクロス東京の週末を、棈木さんの声と合わせて振り返っていく。

2023.04.24

impression

GIANT TCX|シクロクロスバイクの王道に舌を巻く

La routeの制作メンバー&関係者が気になる or 自腹で買ったアイテムをレビューする「LR Pick up」。第9回目は自身もシクロクロスの「C1」で走るジャーナリストの小俣雄風太が、昨シーズンからメインバイクに選んだGIANTのTCXをピックアップ。シクロクロスレースからロードタイヤを履かせたライドまで幅広いフィールドでテストした。

2022.04.27

interview

日本初開催の“ビーチクロス”参戦記|砂を駆ける喜び、プライスレス

さる10月22日、千葉県九十九里町の片貝中央海岸で日本初となるビーチレース「Beach Cross Crit 99(ビーチクロスクリテ99)」が開催された。本来なら海水浴客やサーファーが主役なはずの砂浜だが、この日だけは秋晴れの真っ青な空の下、マウンテンバイクやグラベルバイクが疾駆した。この新奇な光景を見届ける、いや、身をもって体感するため、オフロードビギナーかつ砂浜の上を一度も走ったことがない栗山晃靖と高山太郎が各人の愛車をビーチ仕様に仕立ててエントリーすることにあいなった。本記事では、そんな2人によるビーチクロス参戦記を、本イベントを手掛けたチャンピオンシステムジャパン代表の棈木亮二さんのインタビューとともにお届けする。

2023.12.25

impression

CHALLENGE SANREMO|高級レストランの賄い料理

La routeの制作メンバーが気になるor自腹で買ったアイテムをプチレビューする「LR Pick up」。第16回は、コットンケーシングの手作りタイヤで有名なイタリアのチャレンジから発売されたクリンチャータイヤ「サンレモ」。タイヤにまで高価格化の波が押し寄せている今、3,630円のサンレモの実力は如何なるものか。今まで低価格帯のタイヤとは距離を置いてきたという編集長の安井が試す。

2023.04.12

column

UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース観戦記|グラスゴーで見た、世界最高峰の戦い

あらゆる自転車競技の世界選手権を同時期かつ同会場で行う、UCI肝いりの「メガ」世界選手権。今後は4年に一度のスパンで開催されるとのことだが、その記念すべき第一回大会がスコットランドのグラスゴーで行われた。ジャーナリストの小俣雄風太がツール・ド・フランスの熱狂も冷めやらぬまま、その足でスコットランドへ飛び、ロードのエリート男子を観戦。そこで見たのは、ツールとは一味も二味も違う選手たちの戦いだった。

2023.09.04

impression

スペシャライズド・グラベルロード3種試乗会参加レポート| 飛ぶか、這うか

グラベルロードというカテゴリーが盛り上がり始めて数年。各社から個性的なバイクが次々と登場し、市場は戦場の様相を呈している。そんな流れのなか、スペシャライズドの「メディア向けグラベルバイク試乗会」が開催され、同社の「クラックス」「ディヴァージュ」「クレオ」というまったく性格の異なる3台を同条件で比較させていただく機会を得た。ロードバイクを主戦場とする安井行生は、その3台に乗って何を思い、何を感じるのか。3台と3つのホイールをとっかえひっかえした、グラベル尽くしの試乗会レポートをお届けする。

2022.02.07

column

Tour de France Saitama Criterium|Chasing Pogiiiii!

La routeで「変わりゆくプロトン、変わらない別府史之」や増田成幸選手インタビュー「東京五輪に懸けた夢」でのポートレート撮影を担当したフォトグラファーの千倉志野。ここ数年、生中継はもちろん、Netflix『ツール・ド・フランス: 栄冠は風の彼方に』や小俣雄風太氏のポッドキャスト「Arenberg」を通じて、これまで以上にツール・ド・フランスに熱を上げているという。そんな彼女が、タデイ・ポガチャルやペテル・サガンらが参戦した「J:COM presents 2023 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」の撮影を敢行。ファインダー越しに見つめ、切り取った選手たちの何気ない表情や極彩色のプロトンの姿を通して、さいたまが黄色に染まった2日間を追想していく。本記事はスマートフォンではなくぜひPCの大きなモニターでもご覧いただきたい。

2023.12.25

interview

中野喜文×永井孝樹のスペシャル対談|ヨーロッパで仕事をするということ

ロードレースの世界にあって、本場ヨーロッパに挑んできたのは選手だけではない。1998年にイタリアへ渡り、ヨーロッパのトップチームで活躍したマッサーの中野喜文とメカニックの永井孝樹がその人である。彼らの挑戦から四半世紀が経とうとする今、二人の活動を通じてヨーロッパのチームスタッフを夢見る者も増えてきた。今回の企画ではそんな彼らの対談を通じて、異邦人としていかにヨーロッパのチームに溶け込み、プロフェッショナルとして振る舞い、そして後進へとその想いを繋いでいこうとしているかを感じていただければ幸いだ。ファシリテーターは、今年のツール・ド・フランスに帯同したLa routeでもおなじみの小俣雄風太が務める。

2022.07.25

interview

留目夕陽選手インタビュー|自らの可能性を問う2年間

EFエデュケーション・NIPPOディベロップメントチームでの1年半の活動を経て、来季からEFエデュケーション・イージーポストへの昇格が決まった留目夕陽選手。ここ2年、ワールドチームで走る日本人は新城幸也選手のみという状況だっただけに、ロードレースファンが留目選手にかける期待はいやが上にも高まるばかりだ。La routeでは昇格発表直後のそんな留目選手にインタビューを敢行。彼の口から出てきたのは「グランツールに出たい」「ステージ優勝したい」といった威勢のいい発言ではなく、むしろ今をしっかりと見つめる冷静沈着な言葉の数々だった。果たして世界への切符を手にした、21歳のリアルとは――。

2023.12.11

column

小俣雄風太のTDF現地取材レポート|Le Tour Ensemble 2023

世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」。2023年も選手、機材メーカー、メディア、観客、そしてオーガナイザーまでをも飲み込みながらプロトンは突き進み、そして数々の物語を生み出した。La routeでは昨年好評だった、ジャーナリスト小俣雄風太のツール現地取材日記「Le Tour Ensemble」を1か月に渡ってお届けする。中継には写らない現地の空気感を、世界最高峰のレース取材の裏側を、そして小俣雄風太が見て、聞いて、感じたツール・ド・フランスをぜひご覧いただきたい。

2023.08.02