これまで日本になかったレースを

「今度、九十九里でビーチクロスをやるんですよ」

そんなことをチャンピオンシステムジャパン代表の棈木亮二さんからポロっと聞かされたのは、今年1月。シクロクロス東京の密着取材を打診しに、東京都稲城市にあるクロスコーヒーを訪ねたときのことだ。無事に取材のOKをもらい雑談をしていると、棈木さんからいきなり冒頭の言葉が出てきて、ヨーロッパで盛り上がっているという本場ビーチクロスの動画とともに、どんな競技なのかを解説してくれた。

ビーチクロスを一言でいうと、海水浴客が少ない冬のビーチの上を自転車で競うレースのこと。何となくだが、翌月に迫っていたシクロクロス東京のことよりビーチクロスの話をしているときの棈木さんの方が嬉々としている印象を受けたのだが……いずれにせよ新しいことやワクワクすることにチャレンジするときの棈木さんは、饒舌だし、生き生きとしているし、楽しそうである。

そして10月22日に千葉県九十九里町の片貝中央海岸で開催された「Beach Cross Crit 99」こそ、そのときの話に出たビーチクロスである。そんな流れもあってか、棈木さんが新たに手掛けたこのイベントに、La routeチームもお誘いをいただいた。といっても取材ではなく、レースへの参加を、である。

そもそも最初に話を聞いたときから楽しそうだなとは思っていたし、会場も千葉の九十九里ということでアクセスもいいので「観戦」には行くつもりだったのだが、「参戦」は考えてもみなかった。

海岸線に沿って真っ白な砂浜の上をバイクで走る――こんな経験はそうそうできるものではない。何より記念すべき“第1回大会”に参戦できることにも価値があるし、みんな勝手が分からないだろうからレースビギナーであっても楽しめるんじゃないか。

思案すればするほど、参戦することに何のデメリットも見いだせなくなった。こうして一念発起し、オフロードビギナーかつ砂浜初体験の栗山と高山が愛車を駆って“ビーチクロスする”ことになったのだった。

果たして、日本初となるビーチクロスとは一体どんなレースだったのか。事前の機材チョイスから、走りながら感じたこと、レース後に気づいたことなどを、実際に参加した栗山と高山がエンジョイ勢目線でいろいろな角度から振り返ろうと思う。その前に、そもそもBeach Cross Crit 99とは何なのか、どのように開催に至ったのか、そのあたりの背景を、イベント開催一週間前にオーガナイザーの棈木亮二さんに聞いたので、まずはそちらのインタビューをお届けしたい。

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