今回の企画がスタートしたのは、日本人マッサーの第一人者である中野喜文さんが、今年のジロ・デ・イタリアに帯同したことがきっかけだ。数年のブランクを経てあえて現場に戻ったのはなぜなのか。選手が主役であるロードレースの裏方として活躍するマッサーやメカニックという仕事に就いた経緯とは。日本人が世界の舞台で活躍するためには何が必要なのかーー。何より普段あまり語られることのない世界にもスポットを当てたいという想いもあった。そして、中野さんにお話しを聞くのなら、対談相手はかつて同じチームでメカニックを務めた永井孝樹さんしかいない。

かくして実現した、中野さんと永井さんの対談企画。彼らがロードレースの本場ヨーロッパで、身をもって感じた現場の空気が少しでも伝われば幸いである。

中野喜文(なかの・よしふみ)、1970年生まれ、東京都出身。1998年にイタリアのプロチーム「リーゾ・スコッティ」に研修生マッサーとして加入。マッサーとして日本人で初めてジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスに帯同。99年「カンティーナ・トッロ」と契約し渡欧。2000年には新設された「ファッサボルトロ」にスカウトされ、2005年まで在籍。チームは2001年、2003年のUCIランキング1位のトップチームだった。2006年から2010年まで「リクイガス」に所属。2011年からは拠点を日本に置きつつ現在のワールドツアーチームと契約しスポット参戦。現在は東京・千駄ヶ谷の「エンネ・スポーツマッサージ治療院」の代表を務め、後進の指導にあたる。
永井孝樹(ながい・こうき)。1972年生まれ、山梨県出身。高校卒業後、東京練馬のプロショップ「高村製作所」でフレーム製作に携わる傍ら選手活動を行う。高村製作所の退社後1998年よりイタリアに渡り、「リーゾ・スコッティ」チームにてジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスに帯同。99年「カンティーナ・トッロ」を経て、2000年には新設された「ファッサボルトロチーム」にスカウトされ、2003年まで在籍。二度の世界ランキング1位をメカニックとして支えた。帰国後の2004年からは東京・世田谷にバイシクルショップ「POSITIVO」をオープン。また、J SPORTSではツール・ド・フランスや欧州レースの解説者としても活躍中。

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