ツール直後の世界選へ

ツール・ド・フランス・ファムが終わって1週間後、世界選手権がスコットランド・グラスゴーで開幕する。それを聞いて、散々悩んだけれども、しばらくフランスに滞在して世界選手権を観に行くことにした。

通常なら9月の終わりに開催されるロードレースの世界選手権だが、今年は例外的な事情がある。UCI(世界自転車競技連合)が肝いりで行う「メガ」世界選手権が初めて開催されたのだ。今後4年に一度開催される予定の「メガ」世界選は、あらゆる自転車競技の世界選手権を同じ会場で同時期に行うというもので、いわば自転車競技版のオリンピック。自転車競技をよりグローバルスポーツとして推進していきたいというUCIの、五輪的な商業上の価値も生み出したいという思惑が読み取れる。

そんなわけでほとんどの種目が、いつもと違う時期に世界選手権を迎えることになった。ロードは9月下旬から、トラックは10月下旬から、BMXフリースタイルやトライアルといったアーバンサイクリングは11月からこの8月上旬へと時期が変更された。世界選手権はアスリートにとってシーズン最大の目標だから、みながここに合わせて調整をすることになる。

ロードレースには世界選手権と同等の格を持つツール・ド・フランスという大会があるから、事情は少し複雑だ。8月上旬という日程は、ツールとかなり近い。その他の競技と違い、超高強度のレースが3週間にわたるツールのすぐあとに世界選手権があるというのは、選手にとってコンディションを合わせるのが容易でない。

そんな史上で初めての試みである「メガ」世界選。一度現地を訪れてしまいさえすれば、様々な競技を観ることができるのは、自転車ファンにとっては喜ばしいことだ。なんでも初めてのものは見ておきたい気質(昨年のツール・ファムもそれで見に行った)なので、とりあえず行くことにはしていた。が、そもそもは仕事として行く予定だったが、その案件が直前でキャンセルになり、長期滞在する理由もなくなってしまった。フリーランスをやっていると、こういうことはままある。だからこそ誰にでもフリーランスのライター業をお勧めできない……。

途方に暮れつつも、この8月まで「Le Tour Ensemble2023」を連載していたLa route編集部から世界選の記事執筆のスペースをいただき、なんとか目処がついたので慌てて移動を手配する。そんな具合だったので、「メガ」世界選にも関わらず滞在1日、ロードレース男子エリートのみの取材、というよりも観戦とあいなった。ツールの取材日記の延長として、雑感を書き連ねていきたい。

出場選手が違うのはもちろん、選手たちのジャージの色もロケーションも違う世界選手権。

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