レース前のアナウンスに耳を疑う

毎年、シクロクロス世界選手権の撮影遠征では、その前後もできるだけ長く滞在し、他のビッグレースや現地のカルチャーに触れるようにしている。今年2月に開催された2023年のシクロクロス世界選手権はオランダ南部のホーヘルハイデでの開催。これまでに何度も訪れたことがある、僕の慣れ親しんだ場所だ。また今年は世界選手権の翌週にもビッグレースが続き、新しいアルカンシェルが披露されることも予想できたので、迷わず長めに滞在しようと計画を練った。

今回はそんなシクロクロス世界選手権の撮影遠征中にあった、熱い出来事について語ろうと思う。

2月5日に行われたシクロクロス世界選手権、男子エリート。マチューとワウトの一騎打ちとなったレースは、ラストのスプリント勝負でマチューに軍配。僕はこの翌週もベルギーに残り、さらに3つのレースを撮影することにしていた。

それは歴史的なスプリントフィニッシュで、観る者すべてが手に汗握った世界選手権の翌週の話。この旅の前半に行動を共にしたLa routeスタッフの高山さんと別れた数日後の水曜日のこと。

この日はベルギー西部のマルデゲムという街で、UCIクラス2のシクロクロスレースが開催されるということで撮影に向かった。水曜日に? と思われるかもしれないが、そこはシクロクロス大国ベルギー。平日とはいえトップクラスの選手を招待し、男女ともに見応えのある興行レースが行われている。

ちなみに以前は「Ethias Cross」という名称で開催されていてテレビ中継もあったが、今回は残念ながら中継なし。しかし地元の人たちが楽しみにしているレースであり、観客の動員数はなかなかのもの。みんなビールとフリッツを片手に大いに楽しんでいる。

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