秋とは別の顔、冬の宇都宮へ

自転車ロードレースに関わる仕事をしていると、宇都宮は身近な街である。が、実際にこの街を訪れるのは年に一度だけで、それはいつだって秋のジャパンカップだ。しかし例外的に冬に訪れた年があったことを思い出す。それは2016年の12月。宇都宮の郊外、ろまんちっく村という道の駅でシクロクロス全日本選手権が開催されたことがあった。

あれから7年と少し。やはり秋には毎年のように足を運んでいた宇都宮だったが、冬に来るのは2016年以来。再びここで、シクロクロスの全日本選手権が開催されるのだ。

男子ジュニア もはや少年ではない

少し前まで、ジュニアカテゴリーのレースを走る選手は全員立派だと思っていた。競技人口が少ないこの競技において、全日本という舞台に挑む少年たちは、それだけで大したものだ。結果よりも、走ったことに意味と意義があるだろうと。

しかし、ここ数年はそういう牧歌的な見方ができなくなった。今やジュニア世代が、そのままトップカテゴリーで通用することが珍しくないほどに、世界のレースシーンは変化している。ジュニア選手たちは、もはや少年ではなく、アスリートだ。

スタート前の緊張感はどのカテゴリーにも等しく存在する。

今年のジュニアカテゴリーでシーズンを通じて火花を散らすのはMTBを主戦場とする野嵜然新(弱虫ペダルサイクリングチーム)と、トラック種目で超高校級の走りを見せる成田光志(学法石川)。野嵜は昨年12月の野田シクロクロスでカテゴリー1に混ざり40分間を先頭で走り切り、成田は12月の松伏シクロクロスで全日本チャンピオンの織田 聖や沢田 時ら強豪と果敢に渡り合い5位相当でレースを終えた。共にそのレベルは高い。

recommend post


column

全日本自転車競技選手権大会ロード・レース観戦記|チャンピオンとしての風格

2023年6月25日、静岡県の日本サイクルスポーツセンターで91回目となる「全日本自転車競技選手権大会ロード・レース」が開催された。1周8kmを20周し、獲得標高は5,000m弱という世界的に見ても厳しいコースで勝利を掴み取ったのは、JCL TEAM UKYOに所属する山本大喜選手だった。ロードレースの実況や今年もツール・ド・フランスの取材を行うジャーナリストの小俣雄風太は、このレースを見て何を思い、感じたのか。本人の筆によるリアルレポートをお届けする。

2023.07.12

column

La route高山のCX世界選手権観戦記| 熱狂の渦の、ど真ん中へ

マチュー・ファンデルプールとワウト・ファンアールトの一騎打ちとなった「2023 UCIシクロクロス世界選手権」。あの凄まじいデッドヒートの現場に、La routeスタッフ高山がいた。毎年世界選手権を撮影しているフォトグラファー、田辺信彦さんからの同行のお誘いを受け、パスポートもない、語学力もない、シクロクロスも1年半前まで知らなかったという“ないない”尽くしの不惑ライターが過ごしたオランダ、ベルギーでの1週間。ただひたすらに見た、聞いた、感じた、世界選手権期間中のリアルなレポートをお届けする。

2023.02.27

interview

門田祐輔×織田 聖が語る24歳の現在地|焦りと苦悩と手応えと

2023年シーズンも、EFエデュケーション・NIPPO ディベロップメントチームの一員として海外レースを転戦することになった門田祐輔選手と織田 聖選手。二人は同い年のチームメイトということもあり普段から息もぴったり。一方でワールドツアーという狭き門へのステップアップを目指すライバル同士でもある。今回そんな彼らの昨シーズンの振り返りと合わせて、各々の現在地を探るべく対談を実施。選手にしか知り得ない戦いの裏側のみならず、海外生活での苦労や契約のこと、さらに海外レースと日本のレースの根本的な違いまで、ざっくばらんに本音で語ってもらった。

2023.01.16

impression

GIANT TCX|シクロクロスバイクの王道に舌を巻く

La routeの制作メンバー&関係者が気になる or 自腹で買ったアイテムをレビューする「LR Pick up」。第9回目は自身もシクロクロスの「C1」で走るジャーナリストの小俣雄風太が、昨シーズンからメインバイクに選んだGIANTのTCXをピックアップ。シクロクロスレースからロードタイヤを履かせたライドまで幅広いフィールドでテストした。

2022.04.27

impression

FELT AR Advanced 試乗記 ARに見るフェルトらしさ

2014年の先代デビューから6年もの間、フェルト・ARシリーズはリムブレーキ仕様のまま放置されていた。2020年2月、コロナウイルスの影響が広がる直前、遂に新型ARがお披露目される。黎明期からエアロロードシーンを牽引していたAR、最新作の出来はどうか。セカンドグレードのARアドバンスドに安井が乗った。フェルトが使うテキストリームカーボンについても考察する。

2020.11.16

column

La route高山のシクロクロス東京密着レポート|現実と苦悩の狭間にあるもの

2月11日・12日の2日間にわたって開催された「Champion System × 弱虫ペダル シクロクロス東京」。東京はお台場というキャッチーな場所を舞台に、海外の有力選手が参戦したり、地上波番組でも特集されるなど、国内屈指の華やかなシクロクロスイベントとして定着していたものの、2018年をもって開催中止。しかし今年、そんなシクロクロス東京がついに復活した。そこでLa routeですっかりシクロクロス担当となっている高山が、本イベントの期間中、オーガナイザーとして奔走したチャンピオンシステムジャパン代表の棈木亮二さんに密着。5年ぶりに復活したシクロクロス東京の週末を、棈木さんの声と合わせて振り返っていく。

2023.04.24

touring

台湾KOMチャレンジ参戦記|海抜0mから標高3,275mの世界へ

自転車製造のメッカとしておなじみの台湾で、とある自転車イベントが開催された。いや、自転車イベントというよりはサバイバルレースと言った方が正しいかもしれない。花蓮から太魯閣国立公園までの105km、獲得標高3,275mという世界屈指のヒルクライムイベント「台湾KOMチャレンジ」である。ふとしたきっかけでそんな台湾KOMチャレンジに参加することになったのは白石正人、26歳。某外資系メーカーを突如としてリストラになり、大切な祖父を失い、人生のがけっぷちに立たされた彼がサドルの上で見た、標高3,275mの世界とは。

2023.11.27

touring

乗鞍を再発見する私的自転車小旅行|冷泉小屋での白昼夢

岐阜県と長野県の県境にある乗鞍。登山、スキー、温泉などの山岳観光地として知られるが、自転車乗りにとっては「ヒルクライムの聖地」である。1986年からはヒルクライム大会が開催され、多くのクライマーが頂上に向けてペダルを踏む。そんな乗鞍の中腹にぽつんと建っている古ぼけた山小屋、冷泉小屋。16年間閉鎖されていたが、今年リニューアルし営業を再開した。かつてはタイムを縮めるために毎年通っていた安井行生が、数年ぶりに乗鞍を訪れ、冷泉小屋に宿泊。かつての安井にとっては“力試しの場”でしかなかった乗鞍は、今、彼に何を語るのか。

2022.10.03

touring

“激坂さん”の日本縦断ブルべ参戦記(Vol.1)|ランドヌールは北を目指す

日本最南端の佐多岬から、最北端の宗谷岬まで。総距離2,700km、獲得標高約23,000mを一気に走り切る日本縦断ブルべ。それに人生をかけて挑戦した一人の男がいた。とあるイベントでパールイズミの激坂ジャージを着ていたがために“激坂さん”と呼ばれることになった、一人息子と妻と自転車と山を愛するその男は、なぜこのウルトラブルべを走ろうと思ったのか。国内最速でも、ギネス挑戦でもない、普通の自転車乗りによる日本縦断ブルべ参戦記。Vol.1は、参戦を決めた理由と、本番までの苦悩と苦労を綴る。直前になって頻発するトラブル。激坂さん、身を挺してまでネタを作らなくてもよかったんですが……。

2022.08.01

interview

日本初開催の“ビーチクロス”参戦記|砂を駆ける喜び、プライスレス

さる10月22日、千葉県九十九里町の片貝中央海岸で日本初となるビーチレース「Beach Cross Crit 99(ビーチクロスクリテ99)」が開催された。本来なら海水浴客やサーファーが主役なはずの砂浜だが、この日だけは秋晴れの真っ青な空の下、マウンテンバイクやグラベルバイクが疾駆した。この新奇な光景を見届ける、いや、身をもって体感するため、オフロードビギナーかつ砂浜の上を一度も走ったことがない栗山晃靖と高山太郎が各人の愛車をビーチ仕様に仕立ててエントリーすることにあいなった。本記事では、そんな2人によるビーチクロス参戦記を、本イベントを手掛けたチャンピオンシステムジャパン代表の棈木亮二さんのインタビューとともにお届けする。

2023.12.25

interview

KHODAABLOOM STRAUSS PRO RACE2試乗記・開発者インタビュー|ゴールまで、残り42km

ここ数年はずいぶんと積極的に動いているホダカのオリジナルブランド、コーダーブルーム。今春、La routeがホダカのキーマン2人にインタビューを行って記事化した際には、「日本ブランドとして海外ブランドにも負けない価格帯にチャレンジしていく」「目標は彼らと同レベルの戦いに踏み込んでいくこと」という発言が飛び出した。インタビューから数カ月、その“チャレンジ”、“目標”が具現化したようなニューモデル、ストラウス プロ レース2が発表された。果たしてその実力は如何に。試乗&開発者インタビューを通して、コーダ―ブルームの真価に迫る。

2023.10.09

interview

NISEKO GRAVELでシーンのあるべき姿を考えた|あの二の舞を演じないために

グラベルロードを手に入れて、イベントや日々のライドを楽しんでいる安井と栗山の2人。2023年は、日本のグラベルイベントと言えば必ずその名が挙がる「ニセコグラベル」のスプリングライドとオータムライドのどちらにも参加したが、周りを見渡すと絶賛記事しか目につかない。果たして本当のところはどうなのか? La route Talk の第6回は、安井と栗山の2人がニセコグラベル参加を通して感じた課題や、日本のグラベルシーンの行方について語る。対談の最後には、「グラベルはあんまり盛り上がらないほうがいいのかも」などという業界人らしからぬ発言も……。

2023.12.18

impression

ロヴァールCLXⅡを語り尽くす|拡散した嘘、隠された良心

2022年5月下旬。ROVALの「アルピニストCLX」と「ラピーデCLX」がそれぞれモデルチェンジをうけ「アルピニストCLXⅡ」、「ラピーデCLXⅡ」として発表された。「チューブレスレディへの対応」が一番のトピックではあるが、重量は増加し見た目は前作から変更なし。グラフィックには「Ⅱ」の文字すらないので、知らない人から見たらモデルチェンジしたことすら気付かないだろう。今回La routeで取り上げるのは、そんなロヴァールのホイール2種である。CLXⅡに加え、旧型のCLXもお借りしてLa routeの安井行生と栗山晃靖がとっかえひっかえ試乗。記事内ではインプレッションに加え、一部で話題になったサガンのホイール破損事件や海外メディアのあの記事についても話し合った。

2022.09.05

impression

人生最後に選びたいリムブレーキ用ホイール(Vol.02.試乗編)

ディスクブレーキ全盛の今、リムブレーキ用ホイールのラインナップは年々寂しくなってきている。各メーカーも今後リムブレーキ用ホイールの開発に力を入れるとは考えにくい。そう、なくなってからでは遅い。手に入れるのなら今なのだ。本企画では編集長の安井とアドバイザーの吉本が、現在市場で手に入るリムブレーキ用ホイールのなかから「後世に残したい」をキーワードに「ディスクブレーキ時代のリムブレーキ用ホイール選び」を語る。Vol.02はノミネートが終わったホイールの試乗インプレッションをお届けする。

2020.06.15

touring

来て、見て、走った3泊4日の福島滞在記|幻のツールドふくしま

東日本大震災で大きな被害を受けた福島県の沿岸部を舞台にしたロードレース「ツールドふくしま」。震災後に立ち入りが禁じられた市町村や自転車での通行が許されなかった道路などを繋いで構成されたコースは、国内の公道ロードレースでは最長距離となる211km――。スケールの大きさはもちろん、震災から12年を経た福島の「今」に触れられる意味でも意義のあるイベントとなるはずだった。そんなツールドふくしまを取材すべく、大雨が降りしきるなか福島へと向かったLa routeチームだったのだが……。

2023.10.16