なぜミドルグレードが主役なのか

結局、昨年末にお借りした2台のコルナゴ・新型V3は、年をまたいでもLa route編集部に置いたままだった。後述する理由により、試乗にやや時間がかかってしまったためである。明日、やっと返送できる。

絶対不動の旗艦、Cシリーズをトップに据えるコルナゴだが、プロチームに供給されレースを走るのはVシリーズだ。2019年にデビューしたV3-RSと同じ金型を使い、素材を変えてコストを下げ、ミドルグレードとして仕立て直したモデルが本稿の主役、V3である。
昨年、ケーブル類を内装するマイナーチェンジを受けた。変更前はフロントブレーキのホースすら外装だったのだが、後期型ではステムの下を這わせる作りとし、コラムをD字断面としてヘッドチューブの中を通す。これにより、フォークやダウンチューブに開いていた穴がなくなった。

販売形態は3種類の完成車。アルテグラDi2完成車が79万2,000円、スラム・ライバルeタップAXS完成車が70万4,000円、105Di2完成車が64万9,000円と、現代のミドルグレードど真ん中の価格帯に並ぶ。ホイールはいずれもフルクラム・レーシング600DBとなる。

上位グレードと同じ金型を用いて素材を変える、というお決まりの手法によって生まれたミドルグレードを記事の主役に抜擢したのには、もちろん理由がある。

安井のコルナゴ回顧録

栗山:本題に行く前に、V4Rsが出たばっかりのこのタイミングで、なぜV3-RSの下位モデルであるV3の記事を書くのか、というところをまず説明しておきたく。

安井:コルナゴ・ジャパンから「V3の試乗車を用意するんですが、乗ってみませんか?」という連絡をもらい、最初は連載(Pick Up)で軽い試乗記を書こうと思ってたんですが、ハイエンドモデルが庶民の手の届かないところに行ってしまった今、V3を題材として改めて「ミドルグレードとはなんぞや?」を考えてみたいという話になり。

栗山:そうそう。自転車単体のインプレではなく、これまで数々の自転車に試乗してきた安井さんと、プロデューサーの僕で「現代のミドルグレードを考える」という対談企画をやろうということになったわけですね。V3は価格帯も設計も現代のミドルグレードど真ん中という、いい題材でもありますし、高価格化が叫ばれる中、電動コンポで60~80万円のミドルグレード、というのが多くの人にとって現実的なところでしょう。で、V3の話にいく前に、今までたくさん試乗してきた安井さんに色んなところで耳にする「コルナゴらしさ」について聞いてみたいなと。

安井:一番多く乗ったのはCシリーズですね。C68のインプレでも書きましたが、Cの派生モデルのエクストリームパワーからC68までは全部乗ってます。

栗山:年代でいうと2007年ごろからですか?

安井:そうです。エクストリームパワーはとにかく剛性が高いスプリンター専用バイクで、昔ながらの正統派ロードレーサーでした。でも分厚いアルミチューブのフレームみたいに、単にガチガチじゃないんです。高速に持っていって本気で踏むと信じられないくらいによく伸びる。低速でふらふら走っていたのでは全くよさが分からない。

栗山:乗り手を選ぶバイクだった、と。

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