“C”の歴史と意味

肩書で接し方を変えるなんて決して褒められたことではないのだが、Cを冠詞に付けたコルナゴにまたがるときは、Cの系譜を継いだコルナゴを走らせるときは、やっぱりいつも襟を正さねばならないような気分になる。

Cシリーズはいちメーカーの単なる旗艦モデルではないからだ。伝統のラグ構造を用いて、今でもエルネスト・コルナゴ氏の邸宅の地下にある工房で接着され、イタリアのパマペイント1トスカーナ州ピサにある塗装工場。1980年創業。共同経営者であるアレッサンドロ・パッシィとマッシモ・アウコーネのイニシャルを繋げたのが社名の由来。卓越した塗装技術がエルネスト氏の目に止まり、1990年から約30年もの間コルナゴの塗装だけを手がけていた。現在もCシリーズとマスターを担当する。にて塗装される。
誤解を恐れずに言えばそれは「真のコルナゴ」であり、「コルナゴの魂」である。ロード乗りなら誰しも襟を正したくなるというものだろう。

そんなCシリーズ、1989年のC35から2018年にデビューしたC64まで、6台の本流と4台の傍流が存在する。Cシリーズというとラグドフレームというイメージがあるが、創業35周年を記念して(コルナゴの創業は1954年)作られた初作C35はモノコックフレームだった。泣く子も黙る成功作C40シリーズからはラグ構造となり、それを高剛性化したC50、C50の派生モデル(エクストリームC、エクストリームパワー、EPS)と続く。

2010年にはC59を発表する。これまでCの後に続く数字は創業から経過した年数を表していたのに、C59だけは中途半端な数字の上、発表された年代と車名が一致していない。2010年はコルナゴ創業から56年なので、本来ならC56のはずなのだ。その理由を代理店に聞いたところ、「C59はフューチャーバイク(未来の自転車)をコンセプトにしていたため、本来よりも3年早いC59という車名が付けられた」とのこと。

C59には2012年にディスクブレーキ版のC59ディスクも追加された。これが世界初の量産ディスクロードとされている。土の匂いのしないコルナゴとしては意外な動きだったが、「プロからの『全天候型の制動システムを持ったバイクが欲しい』という要望を受けて作った。カーボンフレームの先駆者としていちはやくディスクモデルを開発し、世に先進性をアピールする意味もあった」とのことだった。

C59ディスク。ディスクロード用コンポなどなかった当時、フォーミュラ社と共同開発した独自の油圧ディスクブレーキシステム(当初、駆動系や変速機構はカンパニョーロEPSを流用)を搭載していた。発表時はエンド幅が130mmだったが、すぐに135mmへと広げられている。写真はデュラエースDi2に対応した2013モデル。(出典/コルナゴジャパン)

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