マジで言ってんすか

今年5月に公開したこの記事(前編後編)の取材にはもちろん同行して楽しくお話しをお聞きしたのだが、取材後の率直な感想は「この記事の執筆は難しい」だった。原因はインタビューの最後の、ホダカ株式会社代表取締役の堀田宗男さんと企画開発部部長の雀部ささべ庄司さんのこの言葉。

「我々の現在の目標は、キャノンデールやトレックなどの海外ブランドと同レベルの戦いに踏み込んでいくことです」

今後のコーダーブルームとネストについてお聞きしたときに飛び出した一文。さらに、「価格を海外メーカーに合わせた方がいいのではないかという議論もしている」「海外ブランドにも負けない価格帯にチャレンジしていく必要がある」とも。

よくぞ言った、と思った。予想だにしなかった宣戦布告だった。聞き手としては、「ホダカはユーザーフレンドリーなメーカーとして、これからも高品質なバイクをできるだけお求めやすい価格で日本の皆さんに提供し、快適なサイクリングライフをサポート……」的な、優等生な返答を予想していたのだ。

しかし、それマジで言ってんすか? という印象を抱いたのも事実だ。社内を案内していただいたとき、「ここが開発セクションです」と紹介された部屋が机を数個集めた島に数人とパソコンが数台、という(ビッグメーカーに比べれば)簡素なものだったからなおさらだ。

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