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“本物の”プロトンがやって来た

全く深い眠りにつけず迎えた第1ステージの朝。スタートはほぼ午後からなので少しゆっくりし、朝食にスペイン風オムレツをお腹いっぱい平らげてレースに備える。まるでこれからツールを走るような言い草だがあくまで観戦するだけだ。ただ観戦ポイントをハシゴするとなると忙しくてお昼ご飯を食べる時間もないだろうと考え、なるべく朝はリラックスし、ご飯をたくさん食べて午後に備えるようにした。観戦する方はする方で気合が入っているのである。

生憎の曇り空だが予報によると午後は快晴になるそうだ。地下鉄を使って早速最初の観戦ポイントへ向かう。車内はどこからどう見てもツールの観戦客でごった返しており、今までさんざん目に入っていた赤い水玉Tシャツの割合がより一層増している。バスク、コロンビア、デンマークと色とりどりの国旗が無機質な地下鉄の車内を鮮やかに彩る。

乗っている地下鉄はツールの出発地点となるサン・マメススタジアムの最寄駅も通るため、ほとんどの観戦客はそこで降車していった。残されたのは明らかに観戦しないであろう地元民と僕たち3人という具合で「やはりスタジアムで観戦した方がよかったかな……」とネガティブ思考に陥った。

早くも悶々とした気持ちになってしまったが、ようやく駅に到着。普段は良い写真を撮るために、とにもかくにも人がいないところで撮ろうとするのだが、今回は撮影ポイントに近づくにつれて徐々に観客を見かけるようになり、むしろ安堵した。ツール御一行がやって来るまで、あと1時間半。

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