7月23日(土)ムール貝を食べたいから

前夜に素晴らしい宿と食事に恵まれた翌朝は、すこぶる気分がいい。新しい一日の始まりに気持ちが高まる。しかしツール・ド・フランスは終わりつつある。この日は最終日前日。つまり、個人タイムトライアルの日である。

最終週は酷暑から始まったが、少しずつ暑さも和らいできた。とは言っても、充分に日射しは強く、しばらく日向にいるとくらくらしてくるほどには暑い。タイムトライアルのステージでは、第一走の選手から最終走者、マイヨ・ジョーヌが走るまでに4時間ほどかかるから、この日のロカマドゥールの町民たちは、すっかり肌を焦がすことだろう。

いつものロードレースであれば選手たちの通過は一瞬だ。だからこそ、その一瞬を待ち受ける観衆の緊張感の高まりが一種の熱狂となって選手を歓迎する。テレビでツールを観ていると、街から街へ、賑やかな絶え間なく続いて華やかに見えるが、いざ現地の沿道で彼らとツールを待ってみると、その一瞬のために、そわそわ、ぎゅうぎゅう、がやがや、ぐびぐび、様々なオノマトペの連続であったりする。

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2022.07.24

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2022.07.07

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辻 啓のSakaiからSekaiへ(Vol.01)| 人生を変えた、トスカーナの一本杉

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2021.05.17

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路上の囚人たち(Vol.01)

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2020.08.17

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路上の囚人たち(Vol.02)

社会派ジャーナリスト、アルベール・ロンドル(1884―1932)が、1924年のツール・ド・フランスについて『ル・プチ・パリジャン』紙に寄稿したルポルタージュを、小俣雄風太の翻訳でお届けする。Vol.2は第4ステージ~第6ステージ。砂埃、機材トラブル、劣悪な路面、寝不足と体調不良、灼熱、そして山岳……過酷さを徐々に増していく黎明期のツールの現実を、現在進行中の2020ツールと比較しながら味わっていただきたい。

2020.09.07

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路上の囚人たち(Vol.03)

社会派ジャーナリスト、アルベール・ロンドル(1884―1932)が、1924年のツール・ド・フランスについて『ル・プチ・パリジャン』紙に寄稿したルポルタージュを、小俣雄風太の翻訳でお届けする。Vol.3は第7ステージ、第8ステージと休息日。帯同する車列とのトラブル、熱狂しすぎた観客、悲惨な状況で走ることを美徳とする風潮。ロンドルが選手たちを”囚人”と例えた理由が徐々に分かってくる。

2020.09.09

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路上の囚人たち(最終回)

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2020.09.21

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2021.10.15

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共に「J SPORTS」や「GCN」で海外ロードレースの実況解説を担う両名が、いま海外で起きているレーストレンドを踏まえつつ、自分の理想のライドやカレドニアというバイクの魅力、ひいてはそれぞれのロードバイク観について行った対談を、前編と後編に分けてお届けする。

2022.04.04

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カレドニアにまつわるエトセトラ(後編)

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共に「J SPORTS」や「GCN」で海外ロードレースの実況解説を担う両名が、いま海外で起きているレーストレンドを踏まえつつ、自分の理想のライドやカレドニアというバイクの魅力、ひいてはそれぞれのロードバイク観について行った濃厚な対談を、前編と後編に分けてお届けする。

2022.04.05

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追憶のサイクルウエア

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2020.05.22

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変わりゆくプロトン、変わらない別府史之

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2021.06.21