世界のトップカテゴリーを別府史之選手と共に走ってきた新城幸也選手(バーレーン・ヴィクトリアス)。同世代のプロロードレーサーとして、日本人として別府さんの引退は彼の目にどう映ったのか。「僕たちがみた、別府史之」の冒頭では、新城幸也選手へのミニインタビューをお届けする。

ライバルというより、友達

2016年のブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージ、スタート前の一コマ。フォトグラファーの辻 啓さんが差し入れた自動車雑誌を手に談笑する2人。(photo KEI TSUJI)

――別府さんと初めて会ったのは?

新城:たぶん2004年の沖縄合宿だと思います。僕がエスポワール1ブリヂストン・アンカー・エスポワール=ブリヂストン・アンカーの育成チーム。のとき。別府さんはそのときラポム・マルセイユ2フランスのトップアマチュアチーム。別府さんは当時ブリヂストン・アンカーに籍を置きながら、欧州経験を積むためにヴェロクラブ・ラポム・マルセイユに派遣されていた。で、フランスで走ってたんです。でも、別のチームだったので宿に戻ったときに顔を合わせたくらいで、ほとんど話をしなかったと思います。一つ覚えてるのは、別府さんが釣竿を持ってきてたこと(笑)。トレーニングの後に釣りに行ってたんじゃないかな。

――選手として別府さんを意識したのはいつですか?

新城:広島の全日本選手権(2006年)。別府さんが勝ったときですね。そのとき別府さんはすでにベビー・ジロ(ジロ・デ・イタリアのアマチュア版)で結果を出していたし、ディスカバリー・チャンネルで走っていたので強いことは知ってましたが、それがどのくらいのレベルなのか分からなかったんです。僕はそのときもっと下のレベルで走っていたので、想像がつかない。で、初めて別府さんの走りを目の当たりにしたのが広島の全日本でした。僕はそのときアンダーでエリートに出させてもらえなかったんですが、別府さんは独走でとにかく強かったので、印象に強く残ってます。

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