学生時代の初期衝動

確かに、自転車競技の経験者でもなければ、写真学校を出ているわけでもない。じゃあ「なぜ自転車レースを撮影するという仕事を始めたのか」と問われると、それは結構複雑で、説明に困ったりする。始めた理由について一言で言うならば「自転車が好きだから」であることには違いないのだが。

その昔オーストラリアで釣りのツアーガイドになろうとしていたことや、バイシクルメッセンジャーとして働いていたこと、実は今でもツアーガイドが天職なんじゃないかと思っていることなど、「サイクルフォトグラファー」というよくわからない肩書を名乗るまでの経緯を、ちょうどこのコロナ禍がキャリアを前と後ろに分けそうなタイミングだということもあり、書き記してみようかと。

そもそも、自転車業界には釣り好きが多い気がしている。

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