先入観と誤解

その存在の有無が、世界のあり方を一変させたようなブランドがある。Appleが無ければ、今日の情報社会は生まれていなかっただろう。Nikeが無ければ、今日のスポーツ文化は違うものになっていただろう。Facebookが無ければ、今日の私達のコミュニケーションは違うものになっていただろう。

サイクリングの世界におけるそんなブランドを思うと、たちまち2つが思い浮かぶ。ひとつは、カンパニョーロ。1930年代に生み出されたクイックリリースに始まるイノベーションは、ロードバイクのあり方を変えた。そしてもうひとつは、今回の記事で取り上げるラファ。2004年に生まれたこのブランドが変えたものは、サイクリストのあり方だ。

ラファというブランドにどんなイメージを抱かれるだろうか? おそらく大半のサイクリストにとって、「(高くて)お洒落なサイクリングウェアブランド」だろう。そしてそれは間違っていない。だがブランドの自己認識は、アパレルのブランドではない。ここにラファの本質がある。

(photo SHINO CHIKURA)

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