7月12日(火)田舎のロードサイドに様々な人生がある

休息日がくると選手たちはそれまでの毎日レースから急に休みになり、リズムと体調を崩すことがある。だから選手たちは休息日であっても軽くライドに出てコンディションをキープするよう務める。

嬉しい休息日だが、リズムが崩れるのは取材陣も同じだ。たった1日しか休んでいないのに、なんだか久々にレースコースへと向かうような錯覚に陥る。

この日はヴァンツィエという村の手前で最初の撮影をすることになった。村の農家という農家が集まっているようで、ここでも簡易テントのもと地元の会合が開かれていた。昨日まで泊まっていた村を含むこのあたりはチーズ作りが盛んだということで、有名なブランドでもあるという。グルメな方なら、アボンダンスというチーズの名を聞いたことがあるかもしれない。

日本から来た、と言うとうやうやしくチーズを差し出してくれた。なんでもこの地にチーズを作りにやってきた日本人がいて、地元では有名人なのだそう。どんな苦労と喜びとを味わいながら、異国の地で認められるに至ったのだろう。自分の力不足をもどしかしく感じることの多い今、活路を開いた先人へに対しては敬意しかない。

小さな村だが、ベルギー人にイギリス人と沿道は国際色豊か。ユンボ・ヴィスマとマチュー・ファンデルプール、そしてサガンを応援していた家族は見るからに外国人だと思い、話しかけるとこのアボンダンスに住んでいる地元の方々であった。しかし母はオランダ人で、この村へと嫁いできたのだという。それがゆえに、オランダ人選手を贔屓にしている、とのこと。贔屓の選手の到着を心待ちにしている子どもたちの姿をツールの沿道に見るのはいつだっていいものだ。ツールの沿道にはいろんな人生が集まっている。

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