第4ステージ

ブレストからレ・サーブル・ドロンヌまで、砂埃にまみれる

レ・サーブル・ドロンヌ 1924年6月28日

レンガを食べてしまう、あるいはカエルを生きたまま飲み込んでしまう、そんな大道芸人がいる。私は溶けた鉛に“貪る”奇術師たちを見たことがある。だが彼らはいたって普通の人たちだ。

真に度を超えてしまった人たちというのは、6月22日以来、砂埃を貪り食べるために興奮した様子でパリを旅立った者たちだ。私は彼らを良く知っている。私はその一部でもある。我々はパリからル・アーヴルまでの381km、ル・アーヴルからシェルブールまでの354km、シェルブールからブレストまでの405kmで砂埃をたらふく食べたのだった。それでもまだ十分ではなかった。一度これを味わってしまうと、もうそれなしではいられなくなるのだ。ブレストのホテルのボーイは、我々の食欲を見るにつけ、同情的になった。深夜1時、彼は私たちの部屋の扉を叩いた。

「1時ですよ」彼は声を張り上げた。「砂埃を食べる時間になりました」

「私たちは今日、何kmそれを味わうことになるのかな?」私は聞いた。

「412kmです!」

「なんてこった!」我々は叫んだ。喜びに酔いしれながら、ベッドから起き上がった。

私たちは今日、フィニステール、次いでモルビアン、ロワール・アンフェリウール1かつて存在したフランスの県。今はロワール・アトランティックと呼ばれる。、そしてヴァンデを通り過ぎた。

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