EFFECT オーナーメカニック・日比谷篤史さんインタビュー|本気か、どうか
ライディングスタイルと同様に多様化する「自転車にまつわる働き方」にスポットをあて、好きを仕事にした様々な自転車人にインタビューする連載企画「自転車で食べていく」。記念すべき第 1 回は 2013 年にスタートした、国内における自転車メンテナンス専門店のはしりともいうべき「EFFECT」のオーナーメカニック、日比谷篤史さんにお話を伺った。
2021.12.13
慶應義塾大学自転車競技部インタビュー
「勝てるわけない」を変える力
慶應義塾大学と早稲田大学というライバル同士がスポーツでぶつかり合う早慶戦。120年も前から行なわれている伝統の対抗試合である。野球やラグビーでは好試合を繰り広げる早慶戦、しかしこと自転車競技に関しては力の差が大きかった。自転車競技の早慶戦は1939年から行われているが、慶應の勝率、1割以下。特に近年は「早稲田が勝って当たり前」という状況が続いていた。しかし2022年12月に行われた早慶戦で、21年ぶり、早慶戦の枢軸であるトラック種目では実に40年ぶりに慶應が勝利する。勝てなかったレースに、なぜ勝てたのか。連載企画「若者たちの肖像」の第6回は、慶應義塾大学自転車競技部の主将、佐藤 岳さんと、副主将の山田壮太郎さんに快進撃の理由を聞く。
駅から出て、マックでコーヒーを買い、信号を渡って慶應大学の日吉キャンパスに足を踏み入れると、やはりかつて僕が通っていた大学のことが思い出された。余裕のある土地の使い方、開放的な雰囲気、闊歩する若者たち。取材当日は曇り空で、ときおり小さな水滴が灰色の空から落ちていたが、そんな曇天を吹き飛ばすエネルギーに満ちていた。大学特有の空気だ。ここに通っていたわけではないのに、なんだかちょっと懐かしい。秋になると、この銀杏並木は見事に色付くのだろう。
正式名称、慶應義塾大学。福沢諭吉が開校した蘭学塾を起源に持つ。1868年に当時の年号をとって慶應義塾と改名、日本初の私立大学として近代教育システムを積極的に導入し、ご存じの通り今でも国内有数の名門私立大として知られている。「應」は旧字体のため、「慶応」と表記されることも多い。
同じ私立でも、名門でもなんでもない大学に通っていた筆者が所属していた自転車部、というかサイクリング同好会は、中には本格的にレースをやっているメンバーもいたが、どちらかといえばのんびりツーリングを楽しむサークルだった。
しかし今回の取材対象である慶應義塾大学自転車競技部は、インカレ上位入賞を目指すばりばりの競技部である。主将をトップに統率のとれた軍隊のような集団を想像していたら、全然違った。
主将の佐藤 岳さんは、いかにも優しそうな童顔系の長身イケメン君である。名門自転車部の主将というイメージからは程遠い。「え、彼が主将なの?」と他のメンバーに聞きそうになったくらいだ。ジャイアンというより完全に出木杉君側である。
副将の山田壮太郎さんは、端正な顔立ちのはきはきとしたスポーツマンだが、こちらも先輩風を吹かせるようなタイプには見えない。
実際、下級生やマネージャー含め和気あいあいとした雰囲気だ。撮影中も皆の顔から笑顔がこぼれる。硬派で厳しい競技部というイメージからはかけ離れている。しかし彼らが主将・副将になってから、慶應の自転車部は快進撃を続けている。
インタビューの前に、メインカット用の撮影をさせてもらう。当日、撮影のために集合してくれたのは13名だが、バイトや就活などで参加できなかったメンバーも多く、現在は総勢29名が在籍しているという。
佐藤さんと山田さんは、撮影のためにトラックバイクを持ってきてくれていた。
「お、T4にギブリ。さすが慶應」
というのは門外漢の勝手なイメージであって、よく見るとサーヴェロのT4は傷だらけでかなり使い込まれている。2台ともOBから受け継いだものだという。
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ライディングスタイルと同様に多様化する「自転車にまつわる働き方」にスポットをあて、好きを仕事にした様々な自転車人にインタビューする連載企画「自転車で食べていく」。記念すべき第 1 回は 2013 年にスタートした、国内における自転車メンテナンス専門店のはしりともいうべき「EFFECT」のオーナーメカニック、日比谷篤史さんにお話を伺った。
2021.12.13
2015年に誕生したイタリアのビクシズ。名工として知られるウーゴ・デローザの次男、ドリアーノ・デローザ氏が立ち上げた、ハンドメイドフレームブランドである。プリマ、パトス、エポペア……チタンとスチールを使ったそのラインナップは、「正統派イタリアンロード」の王道を行くものだった。しかし2022年、アメリカンバイクカルチャーの後を追うようにグラベルロード、フロンダを発表する。なぜあのビクシズがグラベルロードを? 違和感を覚えたLa routeは、ドリアーノ氏本人にインタビューを申し込んだ。ビクシズにとってフロンダは、新たな挑戦か、時代への迎合か。
2022.10.24
群馬県の老舗自転車店「サイクルショップ タキザワ」に足を踏み入れると、いつもニコニコと笑顔で迎えいれてくれる人物がいる。今回の取材対象者である渡辺将大さんだ。渡辺さんはサイクルショップ タキザワの店長でありながら、「前橋シクロクロス」を主催し、TTの全日本チャンピオンを輩出した「群馬グリフィン」の監督も務めるなど多忙な日々を送るが、彼のモットーはいつも「楽しいかどうか」にある。学生時代は本気でレースに取り組む競技者だったという渡辺さんは、これまでどんな自転車人生を送り、これからどんなビジョンを描いているのだろうか。彼の拠点である群馬県前橋市に赴き、4時間にわたりインタビューを行った。
2022.10.31
テキサス州の州都、オースティン。ライブミュージックの街としても知られるこの地に、「Tomii Cycles」というブランドを立ち上げた日本人フレームビルダー冨井 直がいる。現代アーティストを目指して1998年に渡米した彼は、なぜ2011年に自身のフレームブランドを立ち上げることになったのか。自転車との邂逅、彼の地でのKualis cycles西川喜行さんとの出会い、そしてフレームづくりへのこだわり――。かねてから親交のあるフォトグラファー田辺信彦が現地でインタビューを行い、冨井 直の素顔に迫る。
2022.05.09
年齢も性格もビジネスの形態も使う素材も考え方も違う。しかし日本のオーダーフレーム界を背負って立つという点では同じ。そんな4人のフレームビルダーが、各々のフレームを持ってLa routeの編集部に集まってくれた。金属フレームの可能性について、オーダーフレームの意味について、業界の未来について、モノづくりについて、忌憚なく語り合うために。その会話の全記録。
2020.04.24
年齢も性格もビジネスの形態も使う素材も考え方も違う。しかし日本のオーダーフレーム界を背負って立つという点では同じ。そんな4人のフレームビルダーが、各々のフレームを持ってラ・ルートの編集部に集まってくれた。金属フレームの可能性について、オーダーフレームの意味について、業界の未来について、モノづくりについて、忌憚なく語り合うために。その会話の全記録。
2020.04.24
彼と出会ったのは、忘年会だった。180cm弱のスラリとした長身とニカッと笑う笑顔が印象的で、聞けば今期からUCIのコンチネンタルチームである「EFエデュケーションNIPPO・デベロップメントチーム」に所属するプロロード選手だという。名前は門田祐輔、年齢は23歳。国内メディアへの露出は少なく日本国内ではほぼ無名ではあるものの、ヨーロッパでレース経験を積み、「ツール・ド・フランス」への出場を目論んでいる。なぜヨーロッパにこだわるのか。その原動力はどこにあるのか。新たにスタートする連載企画「若者たちの肖像」の第1回は、出国直前の門田祐輔選手にインタビューし、彼の生き様をお届けする。
2022.02.28
U23世界選手権出場者、外資系金融機関のエリートサラリーマン、「Roppongi Express」のリーダーでありツール・ド・おきなわの覇者、そしてついには東京の目黒通り沿いに「RX BIKE」のオーナーに――。傍から見れば謎に包まれた人生を送る高岡亮寛さんは、一体何を目指し、どこへ向かっていくのだろうか。青年時代から親交のあるLa routeアドバイザーの吉本 司が、彼の自転車人生に迫る。
2020.05.30
別府史之、38歳。職業、ロードレーサー。日本人初となるツール・ド・フランス完走者のひとりであり、高校卒業後から現在に至るまで、数えきれないほどの功績を日本ロードレース界にもたらしてきた人物だ。今回のインタビューは、フランスに拠を構えている別府が帰国するという話を聞きつけ急遽実施。インタビュアーは、別府史之を古くから知る小俣雄風太が務める。
2021.06.21
ライトやサイコン、スマホやアクションカムといったデバイスを、ハンドルに取り付けるためのマウントを専業にしている会社がある。もしかしたらご存じの方もいるかもしれない。「レックマウント」だ。2万通り以上という圧倒的なバリエーションで他社の追随を一切許さないレックマウントは、いかにして生まれたのか。代表を務める山﨑 裕さんは一体何者なのか。自身もレックマウントを愛用するライターの石井 良が、千葉県の本社を訪れインタビューを行った。
2021.07.05
女子プロロードレーサー、與那嶺恵理。日本国内で活躍後、2016年にアメリカのチームと契約し、その後フランスの名門チームにも所属。現在は、来期ワールドツアーチームに昇格する「ティブコ・シリコンバレーバンク」で、日本人の女子選手として唯一、ヨーロッパのトップカテゴリーで走る選手だ。「Just a bike race。誰かに言われて走るんじゃなく、自分がここでレースをしたいから走る――」。自身にとってのロードレースをそう評した與那嶺。彼女へのインタビューをもとに東京五輪を振り返りながら、日本のロードレース界を、そして與那嶺恵理の現在地を、La routeでおなじみの小俣雄風太が探る。
2021.09.06
別府史之、38歳。職業、ロードレーサー。日本人初となるツール・ド・フランス完走者のひとりであり、高校卒業後から現在に至るまで、数えきれないほどの功績を日本ロードレース界にもたらしてきた人物だ。今回のインタビューは、フランスに拠を構えている別府が帰国するという話を聞きつけ急遽実施。インタビュアーは、別府史之を古くから知る小俣雄風太が務める。
2021.06.21
2021年1月23日。女子プロロードレーサー、萩原麻由子のSNS上で突如として発表された引退の二文字。ジャパンカップで9連覇中の沖 美穂を阻んでの優勝、カタール・ドーハで開催されたアジア自転車競技選手権大会での日本人女子初優勝、ジロ・ローザでの日本人女子初のステージ優勝――。これまで数々の栄冠を手にしてきた萩原は、何を思い、引退を決意したのか。栄光と挫折。挑戦と苦悩。萩原麻由子の素顔に迫る。
2021.02.22
東京から大阪、その距離およそ520km。通常なら3〜4日かけてのぞむようなロングライドだ。しかし自らに24時間というタイムリミットを課し、出発日時をネット上で宣言した瞬間、520kmの移動は“ツーリング”から“キャノンボール”へと意味を変質させる。多くのサイクリストにとって未知の領域であるこのキャノンボールについて、ウェブサイト「東京⇔大阪キャノンボール研究」の管理人にして、過去に2度のキャノンボール成功を達成している「baru(ばる)」さんにインタビュー。サイクリストを惹きつけるキャノンボールの魅力から、明快な論理で導き出される攻略法に至るまで、じっくり教えてもらった。
2022.01.31
ある日、ひょっこり安井の手元にやってきた2017モデルのタイム・サイロン。それを走らせながら、色んなことを考えた。その走りについて。タイムの個性と製品哲学について。そして、タイムのこれからについて―。これは評論ではない。タイムを愛する男が、サイロンと過ごした数か月間を記した散文である。
2020.04.24
『サイクルスポーツ』と『バイシクルクラブ』という、日本を代表する自転車雑誌2誌の編集長経験がある岩田淳雄さん(現バイシクルクラブ編集長)と、La routeメンバー3人による座談会。雑誌とは、メディアの役割とは、ジャーナリズムとは――。違った立ち位置にいる4名が、それぞれの視点で自転車メディアについて語る。
2020.06.29
77度という絶妙な角度。35mmという狭いコラムクランプ幅。7.5mmオフセットしたハンドルセンター。今までなかったフォルムを持つスージーステムは、誰がどのようにして生み出したのか。開発者本人へのインタビューを通して、ステムといういち部品の立案から世に出るまでのストーリーをお届けする。
2020.09.14
なるしまフレンドの名メカニックにして、国内最高峰のJプロツアーに参戦する小畑 郁さん。なるしまフレンドの店頭で、レース集団の中で、日本のスポーツバイクシーンを見続けてきた小畑さんは、今どんなことを考えているのか。小畑×安井の対談でお届けする連載企画「メカニック小畑の言いたい放題」。第1回のテーマはディスクロード。リムブレーキとの性能差、構造上の問題点などを、メカニック目線&選手目線で包み隠さずお伝えする。
2020.11.23