新型ターマックが背負う期待と重責。300kmの果てに見えたものとはー(前編)
意図的なチラ見せで世のロード乗りをザワつかせていた新型ターマックが、ついにヴェールを脱いだ。SL6と同等の軽さと現行ヴェンジに迫る空力性能を手にしたらしく、「ヴェンジなんかもう必要ない」と鼻息荒い。ターマックSL7は、激化している新世代万能ロード戦争を終わらせる一台なのか。編集長の安井がじっくり乗り込んで判定を下す。
2020.08.24
辻、栗山、安井がキッズバイクについて考える
こどもと、じてんしゃ
どうせすぐ乗れなくなるから。子供は荒っぽく扱うから。幼少期に乗る自転車、いわゆるキッズバイクは、そんな理由で軽視されがちである。そもそも数万円の使い捨てママチャリが蔓延するこの国で、高品質なキッズバイクを求める家庭は少なく、子供たちは自ずと安価で重いバイクで自転車人生をスタートさせることになる。しかし、子供時代に自転車でもっといい経験をしていれば、もっと軽やかにスムーズに走る自転車に乗っていれば、今の日本の自転車界はもう少し明るかったかもしれない。業界人として、サイクリストとして、父として、そんな状況を憂う3人、辻 啓・栗山晃靖・安井行生が、親としての自身の経験をもとに「子供と自転車」を考える。
La routeのメイン記事は毎週月曜日の18時に公開される。そのテーマは様々だ。試乗記事をはじめ、技術解説記事、人物インタビュー、開発ストーリー、ツーリングレポート、コラムなどがあり、人によっては興味のないジャンルになることもあるはずだ。
しかし今回の記事はさすがに……と思われるかもしれない。
特にお子さんのいない読者諸兄姉にとってはなおさらだろう。
テーマは子供用自転車、所謂キッズバイクである。
興味のない記事を無理に読む必要もないが、まぁ少し待ってほしい。
子は宝、などと言う。
正確には、「子に過ぎたる宝なし」とか、「千の倉より子は宝」らしいが。
子は親にとってかけがえのない宝物である。と同時に、次世代の社会を担う存在であり、社会にとっても宝でもある、という意味だ。
子供がいる/いないにかかわらず、自転車界という狭い世界においても「子は宝」なのだ。
自転車競技界では、若手発掘・育成に力を入れている個人・団体があり、自転車界の未来にとって重要な働きを担っている。しかし今回La routeで語るのは、それよりももっとずっと前のこと、人生で初めて自転車に触れるその瞬間から、少年少女を経て青年に至るまでに乗る、全ての自転車についてだ。
「子供と自転車」というテーマで語るのは、フォトグラファーの辻 啓、La routeプロデューサーの栗山晃靖、La route編集長の安井行生。3人とも自転車乗りであり、自転車に纏わることを生業とし、そして父親であり、キッズバイク選びに頭を悩ませた経験を有する。
初夏の東京西部、某公園で撮影を終えた3人はそれぞれのキッズバイクを手に、汗をかきながら編集部に戻ってきた。編集部の隣にあるカフェでオーダーしたコーヒーで渇きを癒しながら対談開始。
栗山:La route読者の皆さんは、「なんでいきなりキッズバイクなの?」って思われると思うんです。でも子供って未来そのものでしょう。子供たちに自転車の魅力を伝えて、未来のサイクリストを育てることは、結果的に僕らに返ってくるはずなんです。
辻:長い目で見たら絶対そうですよね。
栗山:そう。だから子供がいる方もいない方も、これからパパ・ママになる方もなる予定のない方も、この記事をきっかけにしてキッズバイク事情を知って、考えてもらえたらなと。
安井:わざわざこんなテーマで記事を作るということは、それなりの理由がありますね。「子供×自転車」の世界が順風満帆だったら、なにも言うことないですから。
栗山:そう。僕ら大人がこんなに自転車を楽しんでるのに、子供が自転車をちゃんと楽しむのって結構ハードル高いんですよ。
安井:移動手段や道具としてだけでなく、自転車で走ることそのものを「楽しむ」という意味ですね。
辻:グラスルーツが大事って言われるけど、本当はさらにそれより前、原点に近い部分のキッズバイクが大事。なのに、今までそこはあまり語られてこなかった。調べればまとめサイトみたいなものは出てくるけど、ちょっと違うし。
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意図的なチラ見せで世のロード乗りをザワつかせていた新型ターマックが、ついにヴェールを脱いだ。SL6と同等の軽さと現行ヴェンジに迫る空力性能を手にしたらしく、「ヴェンジなんかもう必要ない」と鼻息荒い。ターマックSL7は、激化している新世代万能ロード戦争を終わらせる一台なのか。編集長の安井がじっくり乗り込んで判定を下す。
2020.08.24
スペシャライズドは、2020年7月に新型ターマックを発表、同時に販売もスタートさせた。そのわずか3カ月後、ディスクロードにしてフレーム重量600gを下回る超軽量バイク、エートスがデビュー。この時代に空力は完全無視、ダウンチューブにロゴはなく、レースでも使われることはない。スペシャライズドは今、何を考えているのか。なにもかもが異例づくしのエートスを、編集長の安井が考察する。
2020.10.26
この日本でも人気が高まっているニュージーランドのチャプター2が、REREに次ぐ2作目のエアロロードを発表した。マオリの言葉で「飛翔」を意味するKOKOである。ライバル他社がエアロロードを進化させる中、チャプター2はKOKOをどう仕上げたのか。そして、小規模ながら独自の存在感を放つチャプター2は、ロードバイク界の生存競争をどう勝ち抜くのか。小田原で開催されたメディア試乗会に参加した安井のレポートをお届けする。
2022.03.28
空力を前提条件に加えたという電脳の申し子、4代目BMC・SLR01。ACEテクノロジーを初採用した2代目に試乗し、あまりのレベルの高さに感動し、思わず買ってしまった経験のある編集長・安井は、この4代目をどう見るか。BMCのテクノロジーと過去モデルを振り返りながら、最新のSLR01の立ち位置を探る。
2020.10.12
ビッグメーカーの主要モデルの中で唯一リムブレーキだったビアンキ・スペシャリッシマが、モデルチェンジを経て遂にディスク化を果たした。エートスでもなく、ターマックでもなく、スペシャリッシマを買う意味はあるのか。先代のスペシャリッシマに乗って深く感動した編集長の安井が、箱根で新型スペシャリッシマに乗る。「あの美しい想い出を壊さないでくれ」と願いながら――。
2021.08.02
ほとんどサバイバルの様相を呈している昨今のロードバイクシーン。そんななかで、一定の地位を築いているカナダのサーヴェロが、主力モデルであるR5を一新した。先代R5のバランス極上の走りとCシリーズ~カレドニアの魔法の絨毯的走行フィールに感動し、サーヴェロのフレームの仕立て方には敬意を払っているという編集長の安井。しかし、新型R5のファーストインプレッションは芳しいものではなかった―。
2021.11.15
キャノンデールのエンデュランスロード「シナプス」がモデルチェンジを遂げて5代目となった。その姿を見た安井の第一声は「これは果たしてシナプスなのか?」であった。平凡になったフレームワーク、ハイモッドバージョンの消滅、バイクパッキングに対応した台座の数々、そして安全装備「スマートセンス」を一番の売りとしてアピール―—。かつてはツール・ド・フランスにも投入されたこともあるあの「シナプス」は一体どこへいってしまったのだろうか。編集長の安井行生が、キャノンデール・ジャパンへのインタビューも踏まえ新型シナプスの本質に迫る。
2022.03.14
2014年の先代デビューから6年もの間、フェルト・ARシリーズはリムブレーキ仕様のまま放置されていた。2020年2月、コロナウイルスの影響が広がる直前、遂に新型ARがお披露目される。黎明期からエアロロードシーンを牽引していたAR、最新作の出来はどうか。セカンドグレードのARアドバンスドに安井が乗った。フェルトが使うテキストリームカーボンについても考察する。
2020.11.16
直販という販売方法とドイツ人ならではの質実剛健な作りで、瞬く間に世界のトップブランドへと上り詰めたドイツの自転車ブランド、キャニオン。日本でいちはやくキャニオンを手に入れ、これまで通算5台も自腹で購入するほどキャニオンに魅せられた自転車ジャーナリストの吉本 司が、自身のキャニオンへの想いとともに、新型エアロードCF SLX 8について綴る。
2021.03.01
La routeアドバイザーの吉本と打ち合わせをしていたとき。カフェの窓から街路樹に括り付けられた彼のトップストーンを見ると、リムからオレンジのバルブが覗いていた。「チューボリート使ってるんですか」「乗り味はちょっとパリパリしますが、太いタイヤと組み合わせるといいんですよ……」。そんな雑談から生まれた今記事。なぜチューボリートは太いタイヤとの相性がいいのか。タイヤの専門家の話も交えつつ、吉本がチューボリート×太幅タイヤについて語る。
2020.11.30
La routeの制作メンバーが気になる or 自腹で買ったアイテムをレビューする「LR Pick up」。第2回目はプロデューサーの栗山が自腹で購入したオークリーのアイウェア「EVゼロ・パス」をピックアップ。彼にとっては初となる一眼レンズらしいが、そのかけ心地は?
2021.12.03
La routeの制作メンバーが気になる or 自腹で買ったアイテムを簡潔にレビューする「LR Pick up」。第1回目はS-ワークス7のさらに上位モデルとなるハイエンドシューズ、スペシャライズド・S-ワークス アーレスをピックアップ。シューズはS-ワークス一筋だという編集長の安井がテストした。
2021.11.12
「Q&Aをやります」と告知したところ、短い募集期間にも関わらず、読者の皆さんからたくさんの質問をいただきました。機材についてのマニアックな質問から、メディアのありかたについてなど内容も幅広く、読者の皆さんのエンスーぶりが垣間見えました。改めてありがとうございます。一問一問しっかりと回答していたら凄まじい文字数になってしまったので、2回に分けて掲載します。それではLa route一問一答の前編スタートです。
2020.06.22
タイヤやホイールはもちろん、ステムやクランク一つ変えるだけでも自転車の印象は変化する。自転車はそれら複数のパーツの集合体であるがゆえ、セッティングの世界は奥深く、しかも正解がない底なし沼のようなもの。STAY HOMEな今だからこそ、その沼にはまってみてはいかがだろう。がっつり走りに行かなくても、近所を一回りするだけで「セッティングの探求」はできる。参考までに、編集長の安井が普段どのようにセッティングを煮詰めているかをお届けしようと思う。
2020.05.08
近年主流になっているプレスフィットBB。フレームとクランクの間でじっと負荷に耐えている存在。その素材や構造の違いがペダリングフィールに影響を与えているのではないか。4タイプのBBを集めて考察を行った。
2020.04.24
なるしまフレンドの名メカニックにして、国内最高峰のJプロツアーに参戦する小畑 郁さん。なるしまフレンドの店頭で、レース集団の中で、日本のスポーツバイクシーンを見続けてきた小畑さんは、今どんなことを考えているのか。小畑×安井の対談でお届けする連載企画「メカニック小畑の言いたい放題」。第1回のテーマはディスクロード。リムブレーキとの性能差、構造上の問題点などを、メカニック目線&選手目線で包み隠さずお伝えする。
2020.11.23
快適性、軽さ、デザイン性――。ロードバイクの進化に呼応するように、サイクルウエアもまた時代とともに発展を遂げている。本企画では10代から自転車にのめり込み、自身もサイクルウエアに散財し続けたLa routeのアドバイザーである吉本 司が、自身の経験と照らし合わせながらそんな“サイクルウエアの進化”について振り返る。
2020.05.22