夢のような2年間を走り抜けて

2年という時間は実に早い。2年は2年だし日数にしたら730日。数字は嘘をつかないのだけれど、「嘘でしょ」と言いたくなるくらいあっという間の2年間(年齢も24歳から26歳に!)を過ごした私、ワーホリサイクリストこと中内は、イギリス・ロンドンでの生活についにピリオドを打った。

最後の1ヶ月は“怒涛”の“怒”の字がいくつあっても足りないくらいにイベント尽くし。仕事を退職、荷物のパッキングに自転車の梱包、持って帰れないくらいのお土産(2年で自分用のティーカップを6個も買ってしまった……お茶の国だから)、そしてありがたいことにお別れ会を何回も開いてくれて、ソーシャルバッテリーも体力ゲージも共に底をつき日本に帰国したのであった。

当初はワーキングホリデーで海外に暮らすただの“20代の日本人男性”として2年間を生きていくつもりだったのだが、日本語の活字が読みたいという理由でLa routeを購読したのをきっかけに、まさか自分が書いた文章をLa routeの読者の皆様に読んでいただくことになるなんて。ワーキングホリデーで海外に暮らすただの“20代の男性サイクリスト兼ライター”になるとは想像もしなかった。

不定期連載だった「ワーホリサイクリスト中内の自転車日記」のイギリス・ロンドン編は本記事をもって最後となる。ロンドンでのサイクリスト生活を総括するにあたって「何を書こうかな」と思案した結果、この2年間で唯一参加したサイクリングイベント「RideLondon Essex(ライド・ロンドン・エセックス)」と、最長ライド距離の自己記録を更新するべく挑戦した「リバプール~ロンドン390km」の2つに焦点を当て、最後のワーホリサイクリスト中内のロンドン自転車日記とさせていただこうと思う。前編では「ライド・ロンドン・エセックス」について振り返っていく。

ワーホリサイクリスト中内から、ただのサイクリストになった中内 陸、26歳。同級生や友達が結婚・出産ブームに沸いたこの2年で確実に彼らとの“隔たり”を感じたというが、日本に帰ってきての目標は「四国一周」と「東京〜大阪キャノンボール」。ほぼ現実逃避に走っている感もあるが、今年27歳の中内に落ち着く暇はなさそうだ。

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