ものづくりの街、燕三条へ

長いトンネルを抜けると雪国であった。
関越トンネルを抜けて湯沢町の景色が見えた瞬間、心の中でつぶやいたのは川端康成のあまりに有名な書き出しであった。

自分にとって初めての新潟上陸は、La routeの取材で叶うこととなった。今回の新潟行きの大きな目的はふたつ。ひとつはカーボネックスSLDの開発者インタビュー製造工程の見学のために、ヨネックス新潟工場を訪れること。もうひとつは本稿の主役である相場産業の4代目でランウェルの代表取締役の相場健一郎さんにインタビューをすることである。そして“小さな目的”も叶えるために、La routeチームの3人は各々のバイクを持参している。

早朝に編集部を出発して約4時間。この日の目的地である、新潟県三条市に到着した。クルマでの長旅で窮屈を強いられた四肢を伸ばそうと、ひとまずコンビニに立ち寄る。すると、駐車場のアスファルトが赤茶色になっていることに気がついた。たまたま一部がそうなのではない。赤錆のような着色は、コンビニの駐車場内だけでなく、市中の通りの至るところで散見された。

アスファルトの劣化によるものか、排気ガスが関係しているのか…これだ、と納得できる推察ができないまま、コンビニのコーヒーを飲み干し、取材先であるランウェルのヘッドストアへと向かう。

渋滞を見越して早めに東京を出てきた結果、ランウェルに到着したのは朝10時。当初の約束から2時間も巻きで来てしまった我々だが、相場さんは笑顔で出迎えてくれた。

recommend post


technology

RUNWELL工場見学|燕三条で、工具が生まれる瞬間

相場産業の工具ブランド「RUNWELL」の生い立ちをお聞きした後は、もちろん工場見学である。相場産業は、1935年に燕三条に創業し、今でもこの地で金属加工を続けている。なぜ燕三条という地域は「金属加工のメッカ」となったのか。そこで、RUNWELLの工具はどのようにして作られているのか。なぜ工具は鍛造でなければならないのか。熱間鍛造の轟音と熱気をBGMに、単なる鉄の丸棒が世にも美しい工具へと変貌する様を、楽しんでいただきたい。

2023.07.17

column

La route高山のCX世界選手権観戦記| 熱狂の渦の、ど真ん中へ

マチュー・ファンデルプールとワウト・ファンアールトの一騎打ちとなった「2023 UCIシクロクロス世界選手権」。あの凄まじいデッドヒートの現場に、La routeスタッフ高山がいた。毎年世界選手権を撮影しているフォトグラファー、田辺信彦さんからの同行のお誘いを受け、パスポートもない、語学力もない、シクロクロスも1年半前まで知らなかったという“ないない”尽くしの不惑ライターが過ごしたオランダ、ベルギーでの1週間。ただひたすらに見た、聞いた、感じた、世界選手権期間中のリアルなレポートをお届けする。

2023.02.27

column

La route高山のシクロクロス東京密着レポート|現実と苦悩の狭間にあるもの

2月11日・12日の2日間にわたって開催された「Champion System × 弱虫ペダル シクロクロス東京」。東京はお台場というキャッチーな場所を舞台に、海外の有力選手が参戦したり、地上波番組でも特集されるなど、国内屈指の華やかなシクロクロスイベントとして定着していたものの、2018年をもって開催中止。しかし今年、そんなシクロクロス東京がついに復活した。そこでLa routeですっかりシクロクロス担当となっている高山が、本イベントの期間中、オーガナイザーとして奔走したチャンピオンシステムジャパン代表の棈木亮二さんに密着。5年ぶりに復活したシクロクロス東京の週末を、棈木さんの声と合わせて振り返っていく。

2023.04.24

technology

La route自転車研究所 其の一 最重要部品、ボルトを理解する(前編)

コンポーネントやハンドルやシートポストなどのパーツをフレームに固定しているのは、全て小さなボルトである。自転車はボルトによって組み立てられているのだ。しかしある日、はたと気付く。自転車に欠かせないボルトについて、僕らはなにも知らない。素材は? 強度は? 締め付けトルクは? 作り方は? チタンボルトに交換する意味は? 自転車用チタンボルトでも有名な興津螺旋でその全てを聞いてきた。自転車を自転車たらしめる縁の下の力持ち、ボルトに焦点を当てる。

2020.12.07

technology

La route自転車研究所 其の一 最重要部品、ボルトを理解する(後編)

コンポーネントやハンドルやシートポストなどのパーツをフレームに固定しているのは、全て小さなボルトである。自転車はボルトによって組み立てられているのだ。しかしある日、はたと気付く。自転車に欠かせないボルトについて、僕らはなにも知らない。素材は? 強度は? 締め付けトルクは? 作り方は? チタンボルトに交換する意味は? 自転車用チタンボルトでも有名な興津螺旋でその全てを聞いてきた。後編は、「緩み」「チタンボルトの意味」を聞き、ねじの製造工程を見る。

2020.12.14

interview

equipt sardine購入記│怒りと、志と、イワシ

青い自転車用携帯工具がSNSのタイムラインに頻繁に流れてくる。サーディンという名のその携帯工具は、従来のそれとは全く違う形をしていた。作ったのは、日本でマニアックな自転車関連部品の輸入を行う代理店の中の人らしい。ならばと1つ買ってみた。ついでに作った本人に話を聞いてみた。その使い勝手は。7,400円という価格なりの価値はあるのか。安井の携帯工具嫌いは治るのか。

2023.02.08

interview

EFFECT オーナーメカニック・日比谷篤史さんインタビュー|本気か、どうか

ライディングスタイルと同様に多様化する「自転車にまつわる働き方」にスポットをあて、好きを仕事にした様々な自転車人にインタビューする連載企画「自転車で食べていく」。記念すべき第 1 回は 2013 年にスタートした、国内における自転車メンテナンス専門店のはしりともいうべき「EFFECT」のオーナーメカニック、日比谷篤史さんにお話を伺った。

2021.12.13

column

メッセンジャー狂時代(Vol.01)

2000年代、東京。ロードバイクを中心とするスポーツ自転車がブームになりつつあるなかで、もうひとつの自転車カルチャーが注目を浴びつつあった。自転車で荷物を運搬するメッセンジャーである。”自転車便”といういち職業でありながら世界的なムーブメントにもなった当時のリアルを、自身もメッセンジャーとして都内を駆け巡った経歴を持つBambiこと南 秀治が綴る。

2020.11.02

column

不愛想な自転車たち(Vol.01)

「スペック」や「速さ」が重視されるスポーツ自転車において、「ゆるさ」という何の数値化もできない性能で瞬く間に世を席巻した、1998年創業の自転車メーカー「SURLY」。2006年から幾度となく彼らの本拠地ミネソタに足を運んだ自転車ライター山本修二が、今までほとんど語られることのなかったSURLYのすべてをお伝えする。連載第一回目は、SURLYとの出会いと彼らがもつ魅力について。

2020.07.06

column

挑戦者、シマノ(Vol.01)

1921年に創業したシマノ。スポーツ自転車向けパーツシェアが8割を超えていることからも、シマノが自転車業界の中心的存在であることに異を唱える者はいないだろう。しかし、そんな自転車界の王者とも言うべきシマノにも挑戦者だった時代が、確かにあった。100周年という節目の年に、スポーツジャーナリストとして多方面で活躍する山口和幸が、シマノが挑戦者として歩んできたこれまでの軌跡を複数回にわたって辿る。第1回はエアロダイナミクスを追求したaxや社内に巨大な風洞実験室をつくるなど、機能路線を牽引した島野敬三にスポットをあてる。

2021.12.20

column

メカニック小畑の言いたい放題(Vol.6) |2022ツールの機材を分析する

自転車界最大の祭典、ツール・ド・フランスが今年も終わった。選手の世代交代、戦法の変化、新世代王者の誕生。レースの内容が大きく変化したと同時に、機材も変革を迎えている――。なるしまフレンドのメカニック小畑 郁が、編集長の安井行生とともに自転車業界のアレコレを本音で語る連載「メカニック小畑の言いたい放題」のVol.6は、そんな2022ツールの機材について。昨年までは山岳で軽量なリムブレーキが使われ、総合優勝者も見慣れたリムブレーキバイクに乗っていた。しかし今年はディスク&エアロがツールを席巻。そんな状況をメカニック小畑はどう見るか。

2022.08.29

technology

YONEX CARBONEX SLD 開発譚(前編)| 数値化できない性能を求めて

2022年の末、日本のスポーツ用品メーカーであるヨネックスが、新型のカーボンフレーム「カーボネックスSLD」を発表した。コンセプトは次世代の軽量ディスクロード。540gというフレーム重量にも度肝を抜かれたが、走りも驚くべきものだった。箱根の登坂をXSサイズのカーボネックスSLDと共にした安井は、「完成の域に達したリムブレーキ車に近い性能と乗り味」と評した。なぜカーボネックスSLDはここまで軽くなり、こんな走りをするのか。ヨネックスの新潟工場に赴き、カーボネックスSLDが生まれた背景に迫る。前編では、技術開発第一部の古山少太さん、川上清高さん、綾野陽仁さんの3名に開発秘話を聞いた。

2023.06.12

technology

YONEX CARBONEX SLD 開発譚(後編)| カーボンフレームが生まれる瞬間

ミリ単位で積層設計を行い、グラム単位で軽量化をし、フレームの中に織り込まれたった数本の糸が乗り味を左右するという、緻密の極致のようなレベルで設計されたカーボネックスSLD。当然、大雑把にプリプレグを貼ってみたり、塗料を大量に吹き付けたりしたら、開発者の苦労が全てパーである。開発譚をお聞きした後は、ヨネックス新潟工場でカーボネックスSLDの製造工程を見学させていただき、プリプレグの貼り付け、金型での加熱と加圧、こだわりの塗装法などを写真に収め、レポートと共に多数掲載した。世界最軽量級のカーボンフレームが生まれる瞬間を、じっくりとご覧いただきたい。

2023.06.19