(前編はこちら

2007年、新ブランドが花を咲かす

会社見学とランチ休憩を挟み、インタビューを再開すべく会議室に戻った。

午前中に行った前編のインタビューを通じて、ホダカは単に「手広くいろんな自転車を作ってます」という会社では決してなく、スポーツバイク作りに自社の命運を賭けているとすら感じた。

後編では、主にコーダーブルームとネストという2つのスポーツバイクブランドについて、その成り立ちや歩みを聞いていく。

 

——コーダーブルームを立ち上げたきっかけと経緯を教えてください。

堀田:先程も申し上げた通り、スポーツバイクを作るきっかけは、価格競争を強いられる軽快車の製造・販売に頼っていては、いずれ厳しくなるという経営的判断。もうひとつが、単なる移動手段としてだけでなく、休日のサイクリングなどレジャーシーンでも乗っていただける自転車を作っていこうという考えから。そこで価格競争ではなく、品質で競争できるスポーツバイクも手掛けることが最適だと考えたんです。ただ当初は、本格的なスポーツバイクをラインナップするというよりも、日々の移動がもっと楽になり、乗る楽しみの幅を広げられるバイクを作ろうというイメージでした。

——なるほど。

堀田:その後、ジャイアントの劉会長から「バイクの品質も大事だが、明確なコンセプトを打ち出し、そのコンセプトに沿ったブランドを作り、育てていくことも同じくらい大事だ」というアドバイスをいただいて。ならば自社のスポーツバイクブランドを立ち上げようということになり、2007年に生まれたのが「コーダーブルーム」です。立ち上げ時のメンバーは、開発や営業など所属する部署も様々。さらに当時の新入社員も入れて、若い社員や女性社員の意見も取り入れながらスタートさせました。

雀部:スポーツバイクをやるなら、既存のラインナップの中の一商品としてではなく、しっかりとしたプロジェクトチームを作る必要があると考えたんです。

——立ち上げ当時は、現在のような本格的なロードバイクをラインナップするブランドではなかったですよね?

堀田:まずはプロジェクトチームにいた若い女性の意見を積極的に取り入れ、アクティブでスポーティーながら、カジュアルな雰囲気のクロスバイクを製作しました。ブランド名もホダカのアナグラム(hodaka→khodaa)と“花咲く”という意味のbloomを組み合わせた造語で、自転車を通じて生活に花を咲かせようという意味を込めています。レーシーというよりカジュアルな路線のブランドだったので、当時は自転車雑誌以外にもライフスタイル誌の取材を受けたり、ファッションビルのマルイからの依頼でイベントを開催したりもしました。

——ロードバイクがラインナップに加わったのはいつですか?

堀田:2年目からですが、そのときはトップグレードでも11万円ほどのバイクでした。

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