本命はどっちだ

どちらが本音でどちらが建前なのだろう。
本当に作りたいものはどちらなのだろう。
C68とV4Rsに乗ってそう思った。
コルナゴにとって、どちらが本命なのだろう。

金属時代に伝統と経験と職人技で名声を成した欧州老舗ブランドにとって、この技術主導型の時代をどう生き抜くかというのは深刻な問題だ。かつては、ロードバイクの王様といえばイタリア車だったが、今は北米系メーカーが完全に主導権を握っている。

コルナゴは早い段階からカーボンフレームを作っていたため、比較的対処が早かったかもしれない。さらに、世界初のディスクロードをリリースするなど、積極性を見せていた。
しかし、“イタリア病”に倒れ、ロードバイク最前線から離脱したメーカーは多い。コルナゴもそれに罹患しかけたのだと思う。珠玉のフラッグシップであるCシリーズが、エアロ&ディスクの流れに対応しきれなくなったのである。

しかし客観的に見て、コルナゴは試行錯誤しながらも上手く対処してきたと言っていい。この記事で詳しく述べたように、コルナゴはCシリーズを徐々にレースシーンから遠ざけ、代わりに時代に適合させやすいモノコックモデルを投入する。

コルナゴ社のレーシングモノコックフレームの模索は2010年頃のM10から本格的に始まったが、それ以前にもコンフォート系モデルのCLX、ACE、CLX2.0、クリスタロ、CX-1などでモノコックカーボンフレームの経験は積んでいた。

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