「ただそれだけ」のバイクだった

近年希に見るほどのドラマチックな勝利。落車したライバルを待って握手を交わすという感動的なシーンもそれに輪をかけた。地味な色合いのジャージを着るユンボ・ヴィスマは、2022年のツール・ド・フランスにおいて、総合優勝に加え、山岳賞、スプリント賞と総なめにした。まさに圧勝だった。

そんな劇的な活躍に使われたのが、デビュー直前のサーヴェロ・S5。同社が最も得意とするエアロロードのニューモデルなのだから、メーカーや代理店にとってこれほどのプロモーションはない。サーヴェロ関係者の小躍りがみえるようだ。

しかし残念ながら、あくまで筆者の経験則だが、プロチームに供給しているか否か、ビッグレースで勝ったかどうかは、いいバイクか否かには、ほとんど関係ない。
2010年頃までは各チームの機材に小さくない性能差があったが、各種解析技術と、カーボンの設計技術が拮抗している今、以前のような、レース結果を左右するような性能差はない。
だから「プロチーム供給」「グランツール○勝」が意味するものは、メーカーとしての規模が大きく、必要最低限の性能と強度と耐久性が確保されている、くらいの意味しかないと思った方がいい。

それに、前作S5は走らせやすいバイクとは言い難かった。フレームも硬かったが、専用ハンドルがとにかく硬く、ダンシングで全くリズムがとれなかった。
確かに高速域には強く、形状の空力的優位性は感じられたものの、悪く言えば「それだけ」のバイクだった。プロがプロの速度域で走らせるにはメリットが活きたのかもしれないが、筆者とは全く波長が合わなかった。これも、「プロレースで勝ったバイクが一般人にとってもいいバイクとは限らない」という自論を後押しした。

しかし、画一化が進むエアロロードの世界で、フォークとハンドル周りを完全に専用設計にし、ここまで奇抜な形状を考え、それに高い空力性能を与え、量産してしまったサーヴェロ技術陣の仕事には敬意を表したいと思った。こういうバイクがなければ面白くない。

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