パンは膨らむ、米を食え!

ル・アーヴル 1924年6月22日

昨日、彼らは夜の10時半までポルト・マイヨのレストランで夕食をとっていた。それはまるでヴェネツィアのお祭りのようだった、というのも連中は色とりどりのジャージを着ていて、遠くから見る分にはさながらヴェネツィア名物の紙ちょうちんに瓜二つだったからだ。

彼らは最後の一杯を飲みにかかっていた。それを済ませて、立ち上がり外に出ようとしたところで、彼らは群衆に取り囲まれ、担ぎ上げられたのだった。彼らこそが、ツール・ド・フランス11924年に開催された第18回となるツール・ド・フランスは、6月22日から7月20日まで、全15ステージ、総走行距離5425kmで行われた。出場者は157人。21ステージで3000km強を走る現在とは違い、総走行距離も1ステージあたりの距離(平均362km)も各段に長い。また、「フランス一周」というイベント名の通り、忠実にフランスを一周していた。に出走する自転車選手なのだ。

私はというと、朝の1時にアルジャントゥイユ2パリの北西約10キロメートルにある町。19世紀後半にはパリジャンが水浴に来る避暑地となり、印象派の絵の題材としても知られる。初期のツールは、パリ近郊をスタートしパリにゴールするというコースだった。へ向かっていた。紳士淑女たちが夜中に自転車を漕いでいるのが見える。私はセーヌ県にこれほどまでの自転車が存在しているなどとは思いもしなかった。

紳士淑女たちは人々を制して、こう叫ぶ。

「位置につきな! 彼らのお出ましだ!」

実際に選手たちがやってきた。彼らはツールをスタートするべく、アルジャントゥイユへとやってきたのだ。

ほどなくして、近隣が賑やかになってきた。窓辺はパジャマ姿の人々で彩られ、交差点には待ちきれない様子の群衆がひしめいており、いつもだったら太陽が落ちるのと一緒に眠りにつくであろう老婦人たちも、それぞれの家のドアの前で椅子に腰掛けて待ち受けているのだった。乳飲み子の姿は見つからないが、それはさすがに今が深夜だからである。

「見ろ、あの足を!」群集から叫び声がした。「ほら、あの足を!」

選手たちが街路樹をくぐってやってきた。私たちはここで1時間も待っているのだ。「本当に出発するのかい?」選手の一人が落ち着かない様子で言葉を漏らす。だが違う一人が、「そんなにいらいらして何になるんだい?」と返した。

審判が157名の名前を点呼した。フランス人たちは「プレザン」、イタリア人たちは「プレゼンテ」と返す。フランドル人たちが口にした言葉は、私にはわからなかった。

すると審判が言い放った。

「出発!」

群衆の中で、小さな声で女性が叫んだ。

「幸運を! ティベルギアン3エクトール・ティベルギアン。1890年生まれのベルギー人。1919年パリ・トゥール優勝。ツール・ド・フランスでは1921年総合5位、1922年6位、1923年4位という成績を収めていた。!」

157人の男たちがスタートを切った。15分後、ゼッケン223が歩道でタイヤを交換しているのが見えた。彼は今大会最初のついてない男となった。私は乗っていたルノーを停めた。

突然、彼は「こん畜生! 成金め!」「間抜け連中どもめ!」と叫んだ。

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