実験の概要

シマニョーロを実現する小さなプーリーと振動吸収マットと揺れるローラー台がメイン商材というニッチなメーカーから、ブレーキキャリパー、ペダル、シフトレバー、ウエアにパワーメーターなどを有する総合パーツメーカーへと徐々に変貌しつつあるグロータック。今度はロード用ホイールを考えているという。

同社が掲げるイコールコンセプト(「ユーザーの選択肢を増やす」「機材の自由度を上げる」)に沿って、完組ではなく手組を前提とし、ディスクブレーキ用のリムとオリジナルのハブを用意するらしい。

「ディスクブレーキになるとアルミリムにするメリットがコスト以外になくなる」との理由から、リーズナブルなカーボンリムをラインナップする予定だ。

もちろん独自設計ではなく、アジアのカーボンリムメーカーのオープンモデルを使う。そこで、代表の木村さんが頭を悩ませたのがリムハイトだ。

「リム幅はタイヤのトレンドに沿ったものを選べばいい。穴数はいくらでも自由が利く。難しいのが、どのハイトをラインナップするか。そこで、改めてリムハイトによってなにがどう変わるのかを知ろうと思い、30mmから50mmのカーボンリムを5mm刻みで取り寄せてみました。ハブ、スポーク、テンション、タイヤなどの条件を揃えて組んで乗ってみれば、なにか見えてくるものがあるんじゃないかと」。

なにやら面白そうなので、La routeも便乗させてもらうことにした。ホイール比較実験である。概要は以下の通り。

実験(1)
同じリムメーカーのカーボンリムをハイト違いで4種類(30mm、35mm、45mm、50mm)用意し、同じハブ、同じスポーク、同じテンションで組み(組み手はサイクルキューブの長谷川嘉男店長)、試乗。リムハイト以外同条件のホイールで、ハイトが性能・乗り味にどう影響するかを検証した。

実験(1)で試乗する4種類のホイールのスペック。

実験(2)
ホイールの性能に大きく影響すると言われている外周部重量(リム+タイヤ)を揃えた比較実験。

・30mmハイト×30Cタイヤ=合計1,937g
・50mmハイト×25Cタイヤ=合計1,950g

というほぼ同じ外周部重量を持つ2本のホイールを用意。<ローハイトだがタイヤが重いvsディープリムだがタイヤが軽い>という観点で比較し、リムとタイヤの重量比が乗り味にどう影響するかを検証する。

実験(3)
ホイールのスペックとして最もメジャーなトータル重量。

・30mmハイト×14番スポーク=合計1,397g
・40mmハイト×15番スポーク=合計1,396g

というほぼ同じ重量を持つ2本のホイールを用意。<ローハイトだがスポークが重いvsディープリムだがスポークが軽い>という観点で比較し、ホイールのトータル重量が乗り味にどう影響するかを検証する。

実験(3)で比較する30mmと40mmのホイールのスペック。リムハイトは10mm異なるが、スポークの太さを変えているため、トータル重量はほぼ同じ。

実験(1)~(3)ともにタイヤはIRC・フォーミュラプロTLRに統一、空気圧も揃えている。

乗り手は、グロータック代表の木村さん、なるしまフレンドメカニックの小畑 郁さん、La route編集長の安井という脚質も乗り方も異なる3名。

recommend post


column

ラルート調べ隊/タマサイのふしぎ編 │入り乱れる交通ルール。足並みがそろわないのはなぜ?

自転車に乗っているといろんな場面で、「なんで?」と感じることはないでしょうか。新連載「ラルート調べ隊」では、サイクリストの皆さんがふと抱く、でもスルーしがちな素朴な疑問や謎を解き明かします。記念すべき第1回は自転車好きライター石井 良が、全国的にも名高く“自身の庭”ともいうべき「タマサイ」にまつわるふしぎに迫る…!

2021.06.25

impression

SHIMANO WH-R8170-C36|出木杉君は嫌われる?

La routeの制作メンバーが気になるor自腹で買ったアイテムをレビュー、100点満点で評価を下す連載「LR Pick up」。第4回は、多くのロード乗りが熱い視線を送っているであろう新型アルテグラのホイール、WH-R8170。最もローハイトなC36を、手組みからライトウェイトまであらゆるホイールに乗ってきた編集長の安井が試す。アルテグラ初のカーボンホイール、しかも15万円強という低価格。その出来は如何に。

2022.02.10

impression

新型デュラエースホイール試乗記│ 「消去法」からの脱却

新型デュラエースと同時にデビューしたデュラエースのホイール群。大幅値上げしたコンポとは対照的に、ホイールは値下げされた。「よくなったが、高くなった」は当然だ。ホイールは「安くなったのに、よくなった」のか、それとも―。初代となる7700系ホイールからほぼ全てのデュラエースグレードのホイールを試乗、もしくは購入してきた安井が、R9200系デュラエースのホイール3本に乗り、評価を下す。

2021.10.04

impression

La routeに新型アルテがやってきた(前編)

R9200系デュラエースと同時に発表されたR8100系アルテグラ。デュラの衝撃に隠れてしまった感もあったが、セミワイヤレス化、12速化、ローターの音鳴り解消など、デュラエース同様の進化を遂げた。シマノから新型アルテグラ一式をお借りしたLa routeは、なるしまフレンドの小畑 郁メカニックに組付けをお願いし、小畑×安井の対談で整備性、使用感、性能、その存在意義まで、多角的に新型アルテグラを検分する。デュラ同様に大幅な値上げをしたアルテグラに、その価値はあるのか。

2022.01.10

impression

ついに舞い降りた新型デュラエース。 その全貌を解き明かす(技術編)

R9100系から5年。遂に新型となるR9200系デュラエースがデビューする。12速化やワイヤレス変速といった機構で他社に先行されている今、シマノはデュラエースをどのように進化させたのか。8月中旬、和歌山の某所で行われた新型デュラエースのメディア向け発表会に編集長の安井行生が参加。前編ではシマノとの一問一答を通し新型デュラエースの設計意図を紐解き、後編では新型デュラエース搭載車を乗り込み、忌憚なき評価を下す。

2021.09.01

impression

ついに舞い降りた新型デュラエース。 その全貌を解き明かす(試乗編)

R9100系から5年。遂に新型となるR9200系デュラエースがデビューする。12速化やワイヤレス変速といった機構で他社に先行されている今、シマノはデュラエースをどのように進化させたのか。8月中旬、和歌山の某所で行われた新型デュラエースのメディア向け発表会に編集長の安井行生が参加。前編ではシマノとの一問一答を通し新型デュラエースの設計意図を紐解き、後編では新型デュラエース搭載車を乗り込み、忌憚なき評価を下す。

2021.09.03

impression

ピナレロ・ドグマF試乗記|100万円の価値

ロードバイクに求められているものが変わり、ロードバイク作りに必要なものが変わった。業界の勢力図が描き変えられ、かつての名門が驚くほどの凋落を見せている。そんななかで、ピナレロの勢いは陰らない。グランツールでの連戦連勝。東京五輪での独走勝利。そんな彼らの最新モデルがドグマFである。しかし価格を見て誰もが唸った。それは適正価格か、ぼったくりか。編集長の安井が注目の一台を斬る。

2021.09.20

impression

異端か、正統か(SPECIALIZED AETHOS 評論/前編)

スペシャライズドは、2020年7月に新型ターマックを発表、同時に販売もスタートさせた。そのわずか3カ月後、ディスクロードにしてフレーム重量600gを下回る超軽量バイク、エートスがデビュー。この時代に空力は完全無視、ダウンチューブにロゴはなく、レースでも使われることはない。スペシャライズドは今、何を考えているのか。なにもかもが異例づくしのエートスを、編集長の安井が考察する。

2020.10.26

impression

新型エモンダは、新世代万能ロードの旗手になるか(前編)

2020年はビッグメーカーが一斉にオールラウンドバイクをモデルチェンジさせる年となった。トレックもその例にもれず、エモンダを一新。設計にエアロダイナミクスを取り入れ、いわゆる”新世代万能ロード”となった新作に、編集長の安井が試乗した。前編では、新型エモンダの立ち位置と設計を分析する。

2020.07.27

impression

新型ターマックが背負う期待と重責。300kmの果てに見えたものとはー(前編)

意図的なチラ見せで世のロード乗りをザワつかせていた新型ターマックが、ついにヴェールを脱いだ。SL6と同等の軽さと現行ヴェンジに迫る空力性能を手にしたらしく、「ヴェンジなんかもう必要ない」と鼻息荒い。ターマックSL7は、激化している新世代万能ロード戦争を終わらせる一台なのか。編集長の安井がじっくり乗り込んで判定を下す。

2020.08.24

impression

CORIMA・MCC WS+ DX試乗記 ディスクロード用高性能ホイールの行方

ホイールメーカー各社がロードホイールのディスクブレーキ化に四苦八苦している。特に、スポークパターンに制限があるコンプレッション構造ホイールが難しい。しかし、コリマはトップモデルであるMCCシリーズをディスク化してみせた。それはどんな方法で、どんな作りで、どんな走りになっているのか。コリマ・MCC WS+ DX 47mmチューブラーを題材に、ディスク時代の超高性能一体型ホイールのあり方を考える。

2020.09.28

technology

重量半減という衝撃。新世代チューブの真価を問う (前編)

チューボリートとレボループ。熱可塑性ポリウレタンを素材とした、最近話題の超軽量インナーチューブである。“新世代チューブ”などと呼ばれているそれらは、クリンチャー復権を後押しする夢の新製品なのか、それともよくある時代のあだ花なのか。パナレーサーのRエア、ソーヨーのラテックスと比較しながら、新世代チューブの実力を見極める。前編では、技術者2人に話を聞きつつ、ポリウレタンチューブのメリットとデメリットを探る。

2020.07.13

impression

人生最後に選びたいリムブレーキ用ホイール(Vol.01.ノミネート編)

ディスクブレーキ全盛の今、リムブレーキ用ホイールのラインナップは年々寂しくなってきている。各メーカーも今後リムブレーキ用ホイールの開発に力を入れるとは考えにくい。そう、なくなってからでは遅い。手に入れるのなら今なのだ。本企画では、編集長の安井とアドバイザーの吉本が、現在市場で手に入るリムブレーキ用ホイールのなかから「後世に残したい」をキーワードにホイールを選び、それらに試乗し、「ディスクブレーキ時代のリムブレーキ用ホイール選び」を語る。Vol.01は試乗ホイールを選定するための2人のやりとりから。

2020.05.17

impression

FELT AR Advanced 試乗記 ARに見るフェルトらしさ

2014年の先代デビューから6年もの間、フェルト・ARシリーズはリムブレーキ仕様のまま放置されていた。2020年2月、コロナウイルスの影響が広がる直前、遂に新型ARがお披露目される。黎明期からエアロロードシーンを牽引していたAR、最新作の出来はどうか。セカンドグレードのARアドバンスドに安井が乗った。フェルトが使うテキストリームカーボンについても考察する。

2020.11.16

impression

MERIDA REACTO TEAM-E試乗記 変わるべきもの、変わるべからざるもの

前作のデビューからたったの3年。しかし、その3年の間にエアロロードを取り巻く環境は大きく変化した。ディスクブレーキに完全移行しただけではない。「空力よけりゃそれでいい」から「軽さ・扱いやすさ・ハンドリングも優れていて当然」へ。「高速域特化マシン」から「山岳以外をカバーする万能バイク」へ。そんな中、屈指のビッグメーカー、メリダはリアクトをどう仕立ててきたのか。

2020.11.09

impression

BMC TEAMMACHINE SLR01試乗記 自動設計とヒューマニズムの拮抗点

空力を前提条件に加えたという電脳の申し子、4代目BMC・SLR01。ACEテクノロジーを初採用した2代目に試乗し、あまりのレベルの高さに感動し、思わず買ってしまった経験のある編集長・安井は、この4代目をどう見るか。BMCのテクノロジーと過去モデルを振り返りながら、最新のSLR01の立ち位置を探る。

2020.10.12

impression

MAVIC COSMIC SLR45/SL45試乗記 時代の終わりか、それともはじまりか

経営母体の交代。R-SYS、ジクラルスポーク、エグザリットリムの消滅を伴うラインナップ一新。ツール・ド・フランスニュートラルサービスからの撤退――。いちユーザーからすれば混迷を極めていると思えなくもないマヴィックだが、果たして注目の新作、コスミックSLR45とSL45の実力やいかに。同モデルを編集長の安井が試乗した。

2021.02.08

impression

MAVIC COSMIC SLR45/SL45試乗記 時代の終わりか、それともはじまりか

経営母体の交代。R-SYS、ジクラルスポーク、エグザリットリムの消滅を伴うラインナップ一新。ツール・ド・フランスニュートラルサービスからの撤退――。いちユーザーからすれば混迷を極めていると思えなくもないマヴィックだが、果たして注目の新作、コスミックSLR45とSL45の実力やいかに。同モデルを編集長の安井が試乗した。

2021.02.08

impression

CORIMA・MCC WS+ DX試乗記 ディスクロード用高性能ホイールの行方

ホイールメーカー各社がロードホイールのディスクブレーキ化に四苦八苦している。特に、スポークパターンに制限があるコンプレッション構造ホイールが難しい。しかし、コリマはトップモデルであるMCCシリーズをディスク化してみせた。それはどんな方法で、どんな作りで、どんな走りになっているのか。コリマ・MCC WS+ DX 47mmチューブラーを題材に、ディスク時代の超高性能一体型ホイールのあり方を考える。

2020.09.28

impression

新型ターマックの2グレードを比較試乗 S-Worksの意味とExpertの価値

高価格化が進むロードバイク。100万円オーバーが当たり前のハイエンドモデル達の競演もエンターテインメントとしては面白いが、現実離れした話になってしまうのも事実。今回は現実を見ることにする。トップモデルのS-ワークスターマックSL7と比較しながら、ターマックSL7エキスパートに試乗した。新型ターマックのサードグレード、その実力やいかに。

2021.04.05