素材変更によるグレード作り分け、悲喜交々

具体的な年式やモデル名を挙げることはあえて避けるが、かつてアンカーの“8”に辛辣な評価を下したことがある。仕方がないだろう。とにかく走らなかったのだ。ペダリングが重く、せっかく加えたパワーが一体どこに消えてしまったのかと疑問に思うほどだった。
ブリヂストンサイクル側からクレームはなかったが、某誌に掲載後、読者の方から「貴重な日本メーカーの製品をここまで悪し様に書くとは不愉快である」という旨のお便りをいただいた。もしかしたらオーナーの方だったのかもしれない。

しかしアンカーがプロフォーマット1Propulsive Force Maximization Analysis Technology=推進力最大化解析技術のアクロニム。アンカーがその母体であるブリヂストンの基盤技術部門とタッグを組んで構築した設計思想で、近年アンカーがフレーム作りのコンセプトとしている。を使うようになり、レベルを上げた“9”に引っ張られるように“8”の走りも改善されていく。RL8などはRL9よりもバランスがいいと感じたほどだ。

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2021.11.22

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2021.11.22

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