(前編はこちら

VOLT800 NEO 開発のきっかけ

安井:前編でもVOLT800 NEOについて触れていただきましたが、ここからはVOLT800 NEOの開発にフォーカスしてお聞きしていきます。まず、開発がスタートしたのはいつ頃ですか?

塚本:企画を立ち上げたのは2021年の4月ですね。VOLT800の後継モデルをいい加減出さないといけないということで着手しました。

藤本:それを受けて「こういうものを作ろう」と社内で検討をし始めたのが、2021年の11月です。

baru:結構最近なんですね!

安井:VOLT800 NEOの発売が2023年の1月なので、発売まで2年かかってないんですか。VOLT800がベースにあったから?

塚本:そうです。そういえばbaruさん、弊社サイトのひらめきフォーム(キャットアイに製品のアイディアを送ることができるコーナー)から「VOLT900が欲しい」という意見を送ってくれましたよね?

baru:はい。2021年の1月ごろだったと思いますが……。

塚本:実際に商品となったVOLT800 NEOとほとんど変わらないスペックを要望として送ってこられたんです。そうしたら、その日のうちに同様の要望が50件くらい届いたんですよ。

安井:え?

baru:……すみません、VOLT800の後継機を望む同志を煽りました。まさかそんなに届いていたとは。

安井:そういうことか(笑)。

2021年始めに「ひらめきフォーム」から私が送った要望がこちら。NEOはこのときの提案とかなり近いスペックとなった。

塚本:「これは何が起きてるんだ?!」と調べてみたら、baruさんを見つけまして。そのときに頂いた意見の中で、「ローモードで長時間点灯してほしい」という声が非常に多いことが分かりました。それまでも、社内で「明るさを取るべきか、電池寿命を取るべきか」という議論はしていたんですが、「明るさよりも電池寿命を優先したほうがいい」という判断をするのに非常に役に立ちました。今でもそれは間違いではなかったと思っています。

安井:ユーザーの声を受けて開発を始めたわけですね。

塚本:はい。baruさん、その前からVOLT800の後継機の要望を送ってくれてましたよね?

baru:送ってます。実は毎年一回、思い出した時に要望を送ってました。Twitterでも「そろそろ出ないかな?」って5年くらい言ってたはずです。

安井:ライト愛が強い(笑)。

塚本:ログを見ると、2021年の1月24日にbaruさんから「VOLT900が欲しい」というメールが来てますね。それを受けて企画を始めました。

baru:ありがとうございます! まさか私の要望が開発のきっかけになっていたとは……。送ってよかったです。

上が旧型となるVOLT800。下が新型のVOLT800 NEO。

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