「なんだそりゃ?」

カンパニョーロの高性能セラミックベアリングキット、CULTの内外輪を作っているドイツ・FAG社について調べものをしようとネットを徘徊していたら、驚きの事実を知る。
我々が“ベアリング”と聞いて想像するあれ、内輪と外輪の間に小さなボールがありスムーズに回転する「転がり軸受」が実用化されたのは、なんとたった120年ほど前らしい。「産業の米」と呼ばれるほどあらゆる機械に使われるベアリングは、もっと大昔から存在するものだと思っていた。

確証を得ようと何年か前に買っていた「ベアリングの基本と仕組み」という入門書を引っ張り出してめくってみると、やはり「ベアリングが大量生産されるようになったのは、19世紀末から20世紀初頭になってから」と書いてある。

もちろん、転がり軸受のアイディアそのものは遥か昔からあった。
現代と同じ構造の転がり軸受を考案したのは例によってレオナルド・ダ・ヴィンチで、保持器の概念を含んだスラスト転がり軸受のスケッチが発見されている。

しかし、それが実用化され大量生産されるまでには時間を要した。
転がり軸受の進化のドライビングフォースとなったのは例によって自転車で、自転車の車軸に転がり軸受を使う特許は1862年に成立している。それまでの滑り軸受から転がり軸受になったことで、自転車を進ませるパワーは5分の1から10分の1にまでなったという。1868年には転がり軸受を用いた自転車がレースで勝利を納めている。

しかし精度と強度に優れた転動体(ベアリングのボールのこと)を製造するのは意外に難しく、転がり軸受が製造されるようになったのは1900年代初頭のことだった。機械に欠かせないベアリングの歴史は、意外なほど浅いのだ。

「ベアリング(=軸受)」とは、機械の軸を保持し、摩擦を低減して軸の回転運動を容易にするための機械要素で、「転がり軸受」(イラスト左)と「滑り軸受」(イラスト右)に大別できる。「滑り軸受」は、軸を穴に差し込んだ構造の軸受。シンプルかつコンパクトであり、大きな荷重を受けられるなどのメリットがあるが、一般的に摩擦抵抗が大きい。「転がり軸受」は内輪と外輪の間を複数の玉(=転動体)が転がって回転荷重を支える軸受。滑り軸受に比べ大きくなってしまうが、摩擦抵抗を小さく抑えられる。なお、転がり軸受は国際的に規格化されており、互換性・入手性に優れる。なお、滑りと転がりにはどちらも一長一短あり、必ずしも転がり軸受のほうが高性能とは限らない。例えば、エンジンのクランクシャフトを支えるメインベアリング(通称「メタル」)は滑り軸受である。滑り軸受の利点である耐衝撃性、許容回転数、耐久性、軸の保持剛性などがその理由だろう。(出典/ジェイテクト)

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