雑誌が新しい世界を拓いてくれた

2021年12月31日、岩田さんがバイシクルクラブ誌を出版するピークス株式会社を退職された。これをもって岩田さんは、38年間に渡る編集者人生にピリオドを打つことになった。

紙の雑誌からデジタルの世界へ。メディアを取り巻く状況は大きく変わった。

「紙の雑誌の編集者にあこがれてこの世界に入った自分にとって、ちょうど見切りをつけるタイミングだった」という。60歳というきりのいい年齢もその決断を後押しした。

サイクルスポーツ編集長を8年半。
バイシクルクラブ編集長を8年。
日本を代表する自転車雑誌2誌の編集長を務めた人物はいない。
僕の自転車ジャーナリスト人生を力強く牽引してくれた人でもある。

そんな岩田さんに、話を聞こう。
自転車との出会い、若手編集者時代の思い出、思い入れのある企画、自転車雑誌の昔と今、さらにはメディア論、編集者論、自転車のこと、後輩たちに伝えたいこと、自転車メディアのこれから――。
聞きたいことはたくさんある。

電話をしてみた。辞められた直後だったので、そのことはもういいよ、と言われることも覚悟していたが、「なんでもしゃべるよ」と言ってくれた。

初春の陽気の中、岩田さんはキャリーバッグをゴロゴロと引っ張ってLa route編集部にやってきた。
「思い入れのある号、持ってきたんだよ」。
心なしか表情が明るい。編集長という肩書を下ろしたことによるものか。
それとも、今日の対談を楽しみにしてくださっているのか。
その両方だといいのだが。

久しぶりに会うと、雑談が止まらない。数々の取材現場を共にし、岩田さんの戦友とも言える山内 潤也カメラマン(今回の撮影を担当)も一緒になって、わいわいがやがや。いかん、これでは取材が始まらない。

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